2024年11月23日(土)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2009年6月18日

 さすがに日本の国家破産は、さすがに現状では荒唐無稽といえる。しかし、国内余剰資金の増加鈍化や外需によるマネー獲得力の鈍化の可能性を見据えれば、財政赤字を後世代の負担などと悠長に構えるわけにはいかない。このまま進むと、我々が現役であるうちに財政赤字拡大に伴う金利上昇や強引な財政赤字の抑制が不可避となる可能性すら大きく、財政再建の時間的余裕はなくなりつつある。

 この厳しい方向を避ける方法は簡単である。それは、一見打ち出の小槌のように見える赤字国債の増発を危険な選択と受け止め、税収増を実現する成長戦略を遂行しつつも、歳出歳入構造を見直すことで、財政赤字を抑制していくしかないということである。

検討に値する Pay as you go

 もちろん、歳出歳入構造の見直しは現在でも言われている。しかし、歳出抑制が社会保障の質の低下を招くなどという弊害も強まっている一方で、消費税の引き上げを含む税制の抜本改革が先送りされるなかで歳入構造の見直しも大して進んでいない。その中で、米国にはペイ・アズ・ユー・ゴー原則(Pay as you go原則)というものがある。

 それは、義務的経費の歳出を伴う法案や修正案を提案する場合には、議員はその財源を別の歳出削減か、増税で見つけなければならないとする原則で、財政規律が高まると評価されている。このような歳出入を一体化する考え方を日本に導入することができれば、歳出の組み換えや増税がないままに新たな歳出ばかりが実行されるといった危うい事態は回避される。

 少子高齢化への対応、新たな成長戦略につながる低炭素革命の実現、そして格差や将来不安を是正改善させる安心社会の実現などの大きな政策を実行するには財源手当てが欠かせない。その当たり前の財源手当てをしないばかりに、国民の豊かさにとって必要とされる対策がまともに打てなくなるのみならず、重い税負担に苦しめられることになるとすれば、最悪である。

 今回の財政再建の試算は、いつまでも国民に利益をもたらす形で財政赤字を増やし続けることはできず、財政均衡を図りつつ生活の豊かさを維持向上させる知恵と実践が強く求められる局面にいよいよ入りつつあることを強く認識させたといえ、改めて国民と政治家の自覚が求められている。


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