もう1つ、豪州の参加が広く求められているのが、安全保障分野である。2008年のムンバイでのテロ事件以来、インド国内の安全保障は随分と改善されてきたが、まだ課題は残る。特に、対テロ訓練やより素早い効率的テロ対策の作成では、豪州はインドの良きパートナーとして貢献できよう。
そして、豪印二国間経済関係で、最も成長を遂げているのが、教育分野かもしれない。豪州とインドの教育機関がより緊密な協力関係を結ぶとともに、インドの学生がより大勢、豪州に戻ってくるよう努力がなされる予定である。豪州で学ぶインド人留学生は、2009年にピークに達して以来、近年は劇的に減少していた。
最後に、アボット首相は、インド国内では様々な規制によって投資が進まないインド企業に対して、豪州への投資を呼び込むべきだろう。その意味では、アボット政権が障害を取り除き、アダニ・グループがクイーンズランド州のカーマイル・プロジェクトに155億ドル投資することを認めたことは、歓迎すべきことであり、今後のインドからの投資の先駆けとなろう、と述べています。
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論者のグプタ博士は、デリー大学及びオーストラリア国立大学(ANU)で教育を受けた後、米イリノイ大学で博士号を取得し、現在は、アラバマ州にある米空軍Air War Collegeの国際安全保障学部准教授です。
インドのモディ新首相は、この8月30日―9月3日、公賓として日本を訪問しましたが、その後すぐ、豪州のアボット首相、続いて習近平主席が、それぞれインドを訪問しました。そして、モディ首相の訪米も9月にあり、9月中に、インドは、日米豪中との首脳会談をそれぞれ終えることになります。
上記論説が述べるように、インドは伝統的に非同盟中立であり、自国利益を中心に、域内大国とも微妙なバランスを取り、外交を展開しています。そして、現在は、まずインドの経済成長が第1の目的であり、そのために外国投資や外国援助を必要としています。中国には触れずに経済問題を中心に語るべきであるというグプタ博士の主張は、その通りかもしれません。ただ、豪印関係が、経済的にも、文化的にも緊密化すればするほど、相対的に、中国の立場は弱まるでしょう。同様に、今後、日本や米国がインドと様々な分野で協力関係を進めることも、全て、戦略的に見ることが出来ます。