2022年9月26日(月)

オトナの教養 週末の一冊

2014年10月10日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

 著者はまずユーロ圏と日本の2つの経済圏に通じる「共通体験」の洗い出しを行う。そのうえで今後のユーロ圏が日本化を避けるための方策を分析した。

 著者のあげる日本との「共通体験」とは以下の7つである。

1 不況下の通貨高
2 (銀行)貸し出しの鈍化
3 民間部門の貯蓄過剰
4 経常黒字の蓄積
5 金融政策の通貨政策化
6 人口減少
7 上がらない物価

 それぞれの詳しい説明は本書に譲るが、日本が直面した過去の経験を参照しながら、こうした7つの特徴が複合して、ユーロ圏が「日本化」し、「円化」し、「日銀化」すると指摘した。

 中でも「不況下での通貨高」という部分の論考は興味深い。著者も書いているように、2010年以降、慢性的に成長率がマイナス圏に転落し、失業率も歴史的な高水準にありながら、なぜかユーロは大きく下落することなく踏みとどまっている。「なぜか下がらないユーロ」の論点整理をすることが本書執筆の動機、と著者自身が書いているが、かつて実体経済が不調でありながら通貨価値が下がらなかった円の姿と重なることは象徴的である。

日本化を避けるために必要な「4つの教訓」

 そのうえで、著者は今後のユーロ圏が日本化を避けるために何が必要なのかを「4つの教訓」として提言している。

1 金融システム健全化を焦らない
2 財政再建を焦らない
3 金融引き締めを焦らない
4 欧州銀行同盟の進展

 こうした点も日本の経験をもとにしている。日本的な価値基準でいえば1~3のようなことは一刻も早く実現して経済の正常化を図らないといけないと考えがちだが、著者はむしろあらゆる正常化のプロセスを焦らないことの重要性を訴える。逆説的だが、経済状態の異なる多くの国々が集まって形成しているユーロ圏では、むしろじっくりと歩みを固める方が効果的なのかもしれない。一方でユーロ圏の金融機関の監督権限を現在の各国当局から欧州中央銀行(ECB)に譲渡するなどの銀行同盟を迅速に進めることは当然といえよう。

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