2024年11月22日(金)

患者もつくる 医療の未来

2014年10月8日

陣痛促進剤と帝王切開

 このように、助産所と医療機関で全くグラフが異なる原因は何でしょうか。

【図10】帝王切開率の推移
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 それは、帝王切開が助産所では行われない、という理由だけでは説明しきれません。1984年と2012年ではグラフの形はほとんど変わっていませんが、【図10】のように、帝王切開率は大きく変わっている、という事実もありますし、【図11】のとおり、現在の帝王切開術の約4割は「緊急帝王切開」であり、平日の昼間に決めて行われているものではないからです。

 このようなグラフが日本の歴史でつくられてきた原因の一つには、子宮収縮薬(陣痛促進剤)の使用による、出産日時の調整があると考えられます。緊急帝王切開術になった事例でも、その前に子宮収縮薬が使用されていた事例が少なくありません。

【図11】全帝王切開件数中の緊急帝王切開の割合
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 私は現在、産科医療補償制度の再発防止委員会の委員を務めていますが、現在では、病院が夜間や休日の人件費を抑える目的や、ベッドの回転の効率を上げる目的などの、医学的に必要のない陣痛促進剤の使用はやめる方向になっています。そうして、防ぐことができる産科医療の事故を減らす取り組みが進められています。(それらの状況については、「妊婦さんとその家族は必見 安全なお産のために陣痛促進剤について知っておこう」をお読み下さい。)

 夜空に浮かぶお月さまは、私たちの生活との関わりがうすくなって来ていますが、人は皆、ふとしたときに月を見上げでは、宇宙や生命の神秘を今も感じているだと思います。

【修正履歴】初出の「助産所」に「医療介入のない」という説明語句を加えました(編集部 2014/10/8 19:38)
【修正履歴】タイトルを「お産」から「出産」に変更しました(編集部 2014/10/8 22:06)

  
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