南シナ海で目立つ強硬姿勢
南シナ海においても、領土・主権や海洋権益をめぐる対立で優位を占めることを目指して、中国は力に依拠した現状の変更を試みており、一部では現状の変更を実際に達成している。
南シナ海で中国は、ベトナムやフィリピンなどと島嶼の領有権や海洋の管轄権を争っているが、海上法執行機関を使って紛争相手国に対する圧力を強化している。中国の監視船は、体当たりなどの手段も含めて、他国の漁船に対する取り締まりを強めている。また、他国の資源調査船の航行を妨害し、その探査ケーブルを切断したこともある。
12年4月には、フィリピンが実効支配していたスカボロー礁(黄岩島)に監視船を派遣し、フィリピン側と2カ月間にわたって対峙したのち、これを事実上の支配下に置いた。中国は、海上法執行機関を用いて新たな島嶼の占拠を実現したのである。
その後中国は、フィリピンが海兵隊員を常駐させて支配しているセカンド・トーマス礁(仁愛礁)に対するフィリピン軍の補給活動を、海上法執行機関を用いて妨害するようになっている。
人民解放軍も、南シナ海でのプレゼンスを強化し、周辺諸国に対する圧力を高めている。中国海軍は近年、大規模な島嶼奪回訓練を南シナ海で繰り返している。13年12月には、青島を母港とする空母「遼寧」を南シナ海に初めて派遣し、各種の訓練を行った。
翌年1月には、南海艦隊の訓練艦隊が南シナ海を縦断してジャワ海に進入し、スンダ海峡を経てオーストラリア北部のインド洋に展開する遠洋訓練を行っている。また、14年5月に、フィリピン政府は中国がジョンソン南礁で大規模な埋め立てを行っていると発表した。
中国は1988年に、武力行使によって同礁をベトナムから奪取し、恒久的な軍事施設を建設していたが、その周辺を埋め立てることで滑走路の建設を意図しているようである。