Wedge REPORT

2014年10月14日

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飯田将史 (いいだ・まさふみ)

防衛省防衛研究所 米欧ロシア研究室長

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程単位取得退学後、防衛庁防衛研究所に入所。スタンフォード大学東アジア研究専攻修士課程修了を経て、2020年より現職。専門は中国の外交・安全保障政策。

 習近平主席は、中国と周辺諸国との関係について二つの異なった方針を示している。13年7月に開催された海洋強国の建設に関する会議においては、「決して正当な権益を放棄することはできず、国家の核心的利益を犠牲にすることはなおさらできない」と述べ、海洋権益の確保を強く指示した。

 他方で、同年10月に開催された周辺外交工作座談会においては、「周辺諸国との善隣友好関係を発展させることは、わが国の周辺外交の一貫した方針である」とも指摘している。

 中国が今後、拡大する国力に依拠した現状の変更を推し進め、既存の安全保障秩序に対して挑戦する覇権大国を目指すのか。それとも、地域諸国との協調的な関係の構築に努め、既存の安全保障秩序の維持・強化に貢献する責任大国をめざすのか。

 これはひとえに中国自身の選択にかかっている。かつて孫文は、アジアの大国となり周辺諸国に対する強硬な姿勢をとり始めていた日本に対して、アジア諸国との協力を主導する「王道」を進むのか、アジア諸国の支配を目指す「覇道」を進むのかと問いかけた。どちらの選択肢が正しかったのかは、歴史が教えるところであろう。

 日本としては、中国が誤った選択をした場合に備えて不測の事態への対処能力を高めると同時に、中国が正しい選択を行うように促す努力が必要である。既存の安全保障秩序の維持・強化を目指して、米国との同盟関係をより強化するとともに、オーストラリアや韓国などとの安保協力を深化させるべきである。また、既存の秩序を維持することに共通利益を有する東南アジア諸国との二国間・多国間の共同演習などを通じて、その能力向上を図ることも必要であろう。

 同時に、既存の秩序から得られる共通利益の重要性についての中国の認識を高めるために、中国を含めた東アジアの経済統合の動きを積極的に推進するとともに、海賊やテロ、自然災害への対処といった非伝統的な安全保障問題に関する多国間の協力枠組みを活用して、中国との対話を強化することも重要となるだろう。

[特集]南シナ海をめぐる中国とベトナムの衝突

  
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◆Wedge2014年8月号より

 

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