2024年12月8日(日)

【緊急特集】エボラ出血熱

2014年10月14日

 そもそも、WHOのスタッフやWHOが協力を要請する専門家には、資金力も政治力もあるCDCの出身者が多い。だったら、CDCを最初から頼りにする方がいい、という発展途上国も多いが、迅速な国際協力との引き換えに、政治的な駆け引きが後からついてくるということは少なくない。

そして、日本の取るべき道は?

 オバマ大統領が国際協力を表明した10日後の9月26日、安倍総理大臣は国連で一般討論演説を行い、エボラ出出血熱対策として、国連などに総額4000万ドル (日本円で約44億円)の追加支援を実施することを表明した。演説の中で安倍首相は、防護具約50万着のほか、エボラの治療に効果が見込める富山化学工業の「ファビピラビル」を提供する準備があるとし、「日本からはすでに経験の豊富な専門家をWHOの一員として派遣した。今後もエボラ出血熱との闘いに日本政府は能う限りの力を尽くす」との決意を語った。

 金と物の援助はさておき、気になるのは、今後、日本に期待される人的貢献だ。

 アメリカに追随するような形で援助を表明した日本ではあるが、世界でエボラウイルスに感染した医療者の数は、12日付で報告されたテキサス州の看護師のケースを加えると合計418人。うち234人がすでに死亡している。

 派遣した専門家が発病した場合、安全に日本に輸送し、パニックを起こさず、国内での感染を広げずに治療を受けさせることは本当に可能なのか、といった課題も残る。

 アメリカにおいて医療者の院内感染が生じ、封じ込めがおぼつかない状況の中、本当に「ウイルスを持ち込むリスク」を負ってまで、日本から専門家を派遣する必要があるのか、改めて政治判断が問われるところだ。

【編集部注】厚生労働省は、「感染疑い段階の検体は感染研で取り扱うことができ、簡易診断までは行うことができる」としている。ただし、確定診断を下し、その後の治療につなげていくためには、ウイルスを抽出・分離した状態で扱うことが必要になるが、BSL-4レベルの第一種病原体等取扱施設としての指定を受けていない感染研ではエボラウイルスを扱うことができない。早急な指定が必要である。(2014年10月16日18:45)

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