2024年4月27日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2014年10月30日

 理由は根深く、複雑だが、本書はその理由として高齢者の社会的な孤立があると指摘する。家族や近隣社会、行政との関わりから孤立する。一人で暮らし、経済的にも追い込まれる。体力的にも衰えてゆく。そうした中で犯罪に走ってしまうのだ。

犯行の引き金はないのかもしれない

 さらに本書は、高齢になることによる様々な変化にも言及する。たとえば体力の低下、経済的な環境の悪化による不安、仕事がなくなることによる人間関係の変化などだ。これは実際に高齢者になってみないとわからない部分もあるだろう。「高齢者になってみなければ高齢者の気持ちはわからない」と本書も言及している。取材者の正直な気持ちの吐露だと思う。

 本書で印象的だったのは、罪を犯した多くの高齢者が、その時のことを問われた時の反応だ。「むしゃくしゃしていた」、「もう、どうにでもなれ」と話しながら、その瞬間については「覚えていない」、「やる、やらない、を迷いながら、どうしてやる方向に決意してしまったのかわからない」といった趣旨の答えをする人が多いことだ。

 取材でも「その時はどういう思いだったのか」という点には当然、迫っている。しかし、はっきりした部分はなかなかわからない。

 本書は〈そもそも罪を犯す瞬間、犯行の引き金になるような具体的なきっかけはないのかもしれない。膨らみすぎた風船が破裂するように、不安な気持ちが限界に達したとき、直接の外的要因がなくてもそれに耐えられなくなって爆発してしまうのかもしれない〉と指摘する。たしかにそうなのかもしれない。「本人もわからない心の闇があるのか」という思いに襲われつつ、筆者もほぼ同じ印象を持った。

習慣づけるべき7つのポイント

 人は誰でも老いる。洋の東西、万人に共通し、あらがえない現実だ。ただ、サラリーマンでも自営業者でも、仕事を勤め上げ、社会で現役を退いた後、命の灯が消えるまでどう過ごせるかは人によって大きく違う。

 子や孫に囲まれて楽しく老後を暮らせる人は本当に幸せだと思う。しかし、世の中にはそういう人ばかりではない。孤独に身をやつしながら暮らす人もいるし、むしろ今はそういう人が増えているのかもしれない。経済的に困窮し、行き場所がなく、犯罪を繰り返して刑務所でずっと余生を送る人もいる。本書は、社会から孤立し、後悔するような罪を犯さないためにも、高齢者が互いに見守り、大事にされる関係をつくることが大事だと指摘する。


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