2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年10月31日

・モディ訪米から得られる結果に対する失望が出るのを防ぐこと。過去、米印関係は、両国における過度の期待から、却って損なわれてきた。両国は民主国家であるから、制度的変革は複雑で緩慢なものとなり得る。忍耐が必要である、と述べています。

 (出典“Priorities for Prime Minister Modi’s Visit: U.S. and India Must Cooperate for Asian Stability”;Lisa Curtis;Heritage Foundation;Sep.24 2014)
http://www.heritage.org/research/reports/2014/09/priorities-for-prime-minister-modis-visit-us-and-india-must-cooperate-for-asian-stability

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 カーティス女史は、ヘリテージの南アジア専門家で、正統派の保守の立場からの論説を多く発表しています。この論説もその一つです。また、近年は、南アジアの安全保障、テロ問題について、数多くの議会証言も行っています。

 論説では、日印首脳会談の成功、中印首脳会談の不首尾をアジア太平洋におけるパワー・ダイナミクスの変化の象徴的な例として引き合いに出しながら、米印の戦略的利害関係の一致を説き、モディ訪米を契機に米印関係を強化するように主張しています。これは、的確な情勢判断に基づいた、妥当な提言です。そして、過度の期待が失望に転ずることを戒めている点も適切な指摘です。カーティスは、「両国にとり、それぞれの戦略的文脈を理解することが重要である」と言っていますが、それは、米国にとっては、インドが伝統的外交政策である非同盟主義から脱却するのを忍耐強く見守るべきである、ということでしょう。 

 論説は、米国の立場から、米印関係強化のメリットを強調していますが、米印関係の強化がインドにとっても重要であることは言うまでもありません。経済面では、モディが期待するとおり、インドのインフラなどへの米国の一層の投資の誘致に成功すれば、インド経済に大きなプラスになるでしょう。そのためには、モディはインドの経済改革を着実に推進する必要があります。経済改革の推進は、米国からの投資誘致に必要であるのみならず、インドの長期的経済成長にとって不可欠です。防衛協力は、米国のアジア・太平洋戦略にとってのみならず、インド国軍の近代化にとっても重要です。

 米印首脳会談の結果は、貿易、原子力協定など、各論では課題を今後に持ち越した点も目につきますが、全体としては、米印協力を前進させるということで一致したといってよいでしょう。一つ興味深かったのは、日米印の連携強化が謳われたことです。日印関係は既に極めて良好ですが、日本は、米印関係の触媒ともなり得るということです。

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