2024年11月22日(金)

サイバー空間の権力論

2014年11月6日

 現在の主流となっているケーブルは光ファイバーである。1989年に日米間で初めて敷設された光ファイバーケーブルだが、当時通信料が電話にして7500回線分だったものが、現在ではその量を遥かに超えている。最新の光ファイバーケーブルは1秒間に4.8テラビット、電話回線にして7500万回線分もの通信量を扱うことが可能だ。無論これはケーブル一本の通信量であるから、最大8対までケーブルに入れられる光ファイバーや、その他の海底ケーブルの量を考慮すれば、どれほど海底ケーブルが通信事業にとって重要かがわかる。

 また、通信衛星であれば地球からの距離が遠いため会話がワンテンポ遅れがちであるが、光ファイバーの海底ケーブルであれば、遅延は通信衛生の5分の1程度で済むという。このように、通信衛星と比較して遅延も少なく速度も早いことから、インターネット等の国際通信の9割以上は海底ケーブルが用いられている。

 ただし、海底ケーブルは自然災害とも関係が深いことも指摘しなければならない。東日本大震災の際、地震にともない幾つかのケーブルが破損し、日本の通信ネットワークに障害をもたらした。当然のことながら、自然災害によってケーブルが破損すれば通信に支障をきたすのであり、インターネットのようなサイバー空間も、物理的な自然環境と無関係では済まされないことを痛感させられる。とりわけ日本周辺の海底は世界的にみても地理的に地震の多い地域であることから、海底ケーブルの補修や保全は必要不可欠なのである。

情報が抜き取られる?

 海底ケーブルをめぐる大きな問題は盗聴である。米NSA(国家安全保障局)の元職員であったエドワード・スノーデン氏が2013年に暴露した内容に従えば、アメリカとイギリスの諜報機関は200本以上の海底ケーブルに盗聴器を仕掛けているという。すでに世界中に張り巡らされた海底ケーブルであるが、アメリカとイギリスを経由するケーブルの数は多く、またGmailやFacebook等のSNSに関する通信情報をケーブルから根こそぎ傍受していたという報道は世界に大きな衝撃を与えた。

 実際、スノーデン氏の暴露により自身の会話が盗聴されていたことを知ったブラジルのルセフ大統領はアメリカに猛抗議したことは以前の記事(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3892)でも伝えた。そうした影響もあってか、計画そのものは2012年から存在していたものの、2014年2月、ブラジル政府はブラジル―ポルトガル間を結ぶ海底ケーブル敷設に関してEUとの合意を得た。それにより、アメリカを経由せずアメリカに情報を盗まれることのない海底ケーブル網が2015年に運用開始する予定である(ちなみにブラジルとスペインの通信事業者が共同で建設する予定で、総額費用は1億8500万ドルとのことである)。またルセフ大統領は2014年10月に記者会見において、国際海底ケーブルは盗聴のターゲットであると述べている(http://www.bloomberg.com/news/2014-10-30/brazil-to-portugal-cable-shapes-up-as-anti-nsa-case-study.html)。


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