前回の連載は無人飛行機「ドローン」。その技術発展は軍事にもビジネスにも用いられ、空の交通革命を感じさせるものだった(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4306)。一方で空という空間を拡張し、新たなフロンティアを獲得するドローンやビッグデータは、我々をどのような未来へと導くのか。議論が分かれるところである。
ところで、インターネットは何もサイバー空間だけに限定されない。その技術の根本には、100年以上前からある「海底ケーブル」が必要不可欠だった。海底ケーブルとはどのようなものであり、またケーブルからの「盗聴」をめぐる各国の思惑はどのようなものか。海底ケーブルは通信インフラだけでなく、膨大な情報をめぐる「サイバー戦争」を誘発する。目に見えないサイバー空間だけでなく、海底奥深くに横たわるもう一つの情報戦争に着目したい。
地政学上も重要となる海底ケーブル
世界をつなぐ通信ネットワークのはじまりは1850年に遡る。この年イギリス―フランスの海峡間の海底に、電信や電報のためのケーブルが接続された。その翌年の1851年に運用が開始されて以降、大西洋や太平洋を横断した海底ケーブル等、世界中を結ぶケーブル網が20世紀初頭までに完成し、現在でもケーブルが新設され続けている。またケーブルの種類も電話回線用や光ファイバー回線用と進化を続け、電話やインターネット等の大容量通信ネットワークを支えている。
ケーブル敷設には専用の特殊船が用いられており、海底深くにケーブルを敷くという、進化はしつつも作業それ自体は19世紀から変わらない手法が用いられている。ケーブルが海底に置かれているのは、敷設当初は漁船の網にケーブルが引っかかってしまう被害が続出したからである。とはいえ、海底深くケーブルが敷かれた現在でも、地震等の地殻変動やサメが食い破ってしまう等の被害が後を絶たず、ケーブルの補修工事は必須となっている。
日本にとって海底ケーブルはアメリカとアジアを結ぶ最初の地点であり、その意味で地政学上非常に重要な位置を占めている。またKDDI等の通信事業者や、NECをはじめとするケーブル敷設事業も盛んであり、NECは2014年10月にもタイ―香港までの海底ケーブル延伸を受注している。