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メディアから読むロシア

2014年11月10日

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小泉悠 (こいずみ・ゆう)

東京大学先端科学技術研究センター特任助教

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に軍事大国ロシア』(作品社)、『プーチンの国家戦略』(東京道堂出版)、『「帝国」ロシアの地政学』(東京堂出版)。『ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

「形を変えた侵略」を仕掛けているのはむしろロシア

 もうひとつ、注目したいのは、昨今ロシアで一種の流行語となっている「カラー革命」との関連である。もともとこの言葉は旧ソ連諸国における一連の体制転換を指すものであったが(ウクライナの「オレンジ革命」、グルジアの「バラ革命」、キルギスタンの「チューリップ革命」)、現在のロシアではこれが異なった意味を持つようになっている。

 すなわち、西側諸国はこうしたロシアの友好国において反政府勢力を焚き付け、都合の悪い政権を打倒することで、戦争を起こすことなく政治的目的を達成する「形を変えた侵略」を行っている、という一種陰謀論的な見方だ。このような考え方は2010年代以降の「アラブの春」を経てロシア国内で強化され、2013年末以降のウクライナ危機によってロシアの政治指導部内で広く語られるようになった。

 また、これについては機会を改めて紹介するが、ロシアの戦略家たちは、こうした「形を変えた侵略」と在来型軍事力の組み合わせこそが21世紀の新たな戦争の形であり、ロシアにとっての新たな脅威であるという考え方を提起しつつある。

 これはかなり陰謀論的な見方ではあるが、今日の世界が直面している脅威のかなりの部分は西側が自ら作り出したもの、というプーチン大統領の指摘には一定の説得力があることもたしかである。

 ただ、これはそのままロシアにもあてはまることであろう。現在、ウクライナにおいて「形を変えた侵略」を仕掛けているのはむしろロシアの側であり、その結果としてロシアは経済制裁や国際的な孤立に直面しつつある。

 では、こうした世界にロシアはどのように対処しようとしているのか。次回はこの点に焦点を当てて、引き続きプーチン演説の中身をご紹介していくことにしたい。

*後篇はこちら

  
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