2022年11月29日(火)

メディアから読むロシア

2014年11月10日

»著者プロフィール
著者
閉じる

小泉悠 (こいずみ・ゆう)

東京大学先端科学技術研究センター特任助教

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に軍事大国ロシア』(作品社)、『プーチンの国家戦略』(東京道堂出版)、『「帝国」ロシアの地政学』(東京堂出版)。『ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

「西側の政策が結果的に
新たな国際的脅威を作り出している」

 再びプーチン大統領の発言を引いてみよう。

アナロジーを用いるならば、これはいわゆる成金が思わぬ富を手にしたようなものです。この場合、その富というのは、国際的なリーダーシップと支配の形成ということです。彼らはその富を(もちろん彼ら自身の利益のためにも)適切に運用するのではなく、多くの愚かなことをしでかしました。
(中略)

「国家主権」という観念自体が、ほとんどの国々にとって相対的なものになってしまいました。つまり、世界の唯一の権力の中心に対して忠実であればあるほど、その政治的正統性またはその支配層の政治的正統性が高まるということです。
(中略)

従おうとしないものに対してどのような手が用いられるかはよく知られており、そのことは幾度も実証されてきました。彼らがこうした紛争に非合法な介入を行い、不都合な体制を転覆しようとするとき、軍事力の行使、経済及びプロパガンダの圧力、内政干渉、そして「超法規的な正統性」のアピールが行われます。何人もの指導者に対する違法な脅迫が行われている証拠はますます増加しています。これは「ビッグブラザー」が、自らの同盟国も含めた全世界を監視下に置くために何十億ドルもの資金を投じていることにほかなりません。

自らに問うてみましょう。こんな中で生きることが果たして快適なのか。安全なのか。こんな世界で生きることが幸福なのか。そして公正で合理的なのかと。実際はそれほど恐れる必要などないのでしょうか。これは間抜けな質問なのでしょうか。米国の例外的な地位と、彼らのリーダーシップのやり方は我々皆に恩恵があり、彼らが世界中の出来事に介入するのは平和、繁栄、成長、そして民主主義をもたらすのでしょうか。そして我々はそれを甘受すべきなのでしょうか。

改めて申しましょう。そんなことはないのです。決してそんなことはないのです。

一国が覇権を持ち、彼らが自分のモデルを押しつけることは正反対の結果をもたらします。彼らは紛争を解決する代わりにエスカレートさせ、安定した国家主権の代わりにカオスをもたらします。そして民主主義の代わりに、公然たるネオナチからイスラム過激派に至る非常に怪しげな連中を支援しているのです。

彼らは何故、こんな連中を支援するのでしょうか? 彼らはこの連中を、自らの目的を達成するための手段として利用する目的で焚き付けているのです。私は、我がパートナーたちがよくも同じ轍を踏み続けているものだと感銘を受けざるをえません。

 このように、米国を含む西側諸国に対して、プーチン大統領の姿勢は極めて厳しい。この後、プーチン大統領はイラク、リビア、エジプト、シリア、アフガニスタンなどを引き合いに出して、西側の無責任な介入政策や、過激主義者との安易な連携が結果的に新たな国際的脅威を作り出しているのだと指摘した上、次のように皮肉っている。

我々はしばしば、我が同僚や友人たちが、常に自らの政策の結果と戦い、自らの作り出したリスクを喧伝することに努力を払い、かつてない代償を払っているとの印象を持ちました。

新着記事

»もっと見る