2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年11月13日

 中国が多少の潜水艦を南アジアに派遣し、トラブルを起こすことはありうる。しかしトラブルを起こすことと、インドの縄張りでインドを圧倒することは同じではない。警戒をしつつ、海軍力の増強を進めることがインド政府の最も賢明な政策である、と述べています。

(出典:James Holmes‘Coming to the Indian Ocean, the Chinese Navy: How Should India Respond?’(National Interest, October 7, 2014))
http://nationalinterest.org/feature/coming-the-indian-ocean-the-chinese-navy-how-should-india-11415?page=show


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 ホームズ教授は、インドは中国のインド洋進出をあまり懸念する必要はないと言っています。

 インド洋でインドは言ってみればホームチーム、中国はビジターで、インドにはホームチームの利があり、中国海軍がインド洋に進出するのは容易ではないからです。また、中国にとって優先地域は東、南シナ海で、無理してインド洋には進出しないのではないか、というのが理由です。

 論説は、中国から見たインド洋と東、南シナ海を並列的に扱っていますが、2つの海域の中国にとっての戦略的意味は異なります。中国は東、南シナ海は支配下に置きたい、つまり中国にとっての内海としたいと考えています。他方で、インド洋についてはシーレーンの確保、力の投影の観点から考えていて、排他的な影響力を持とうとしているわけではありません。したがって、インドに対する脅威も、それだけ限定的と言えるのではないでしょうか。

 いずれにせよ、論説は、インドに対する中国の海洋進出の脅威を過小評価しているのではないでしょうか。中国がインド洋を支配しようとしないにせよ、インド洋に力を投射しようとすれば、インドは安心していられなくなります。  

 ホームズは、インドはインド洋においてホームチームである、と言っていますが、そうであるからこそ、インドは中国のインド洋への進出に敏感になるはずです。実際、インド政府の高官は、度重なる潜水艦を含む中国艦船のスリランカ寄港に、懸念を表明しています。脅威の受け止め方については、理屈だけでなく、心理面も考慮に入れる必要があるように思います。

  
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