2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年11月13日

 10月7日付の米National Interest誌で、米海軍大学のジェームス・ホームズ教授が、インド洋はインドにとっていわば内海であるうえに、中国にとってインド洋は東、南シナ海より優先度が低いので、インドは中国のインド洋進出をそれほど懸念していない、と述べています。

 すなわち、10年前インドは、中国は「真珠の首飾り」でインドを包囲しようとしているとして、苛立ちを絶やさなかったが、現在インド政府はさほど戦略的懸念を持っていないようであり、海軍などの近代化をそんなに焦っていない。

 インドが中国の進出をさほど懸念していないのは、まず地理がある。インド亜大陸は地域の中心的地位を占め、インドはインド洋の海上交通を管理できる。その上インドには、マラッカ海峡の西からの航路を横切るアンダマン・ニコバル諸島がある。インドは他のいかなる国にも増して、インド洋の管理を重視している。

 東アジアにおいては、中国は米国に対して地元の利を誇れるかもしれないが、南アジアではビジターであり、インドのホームチームの利を克服しなければならない。

 さらに、インドは、中国の「マラッカのジレンマ」、すなわちマラッカ海峡の航行の安全に関する中国の脆弱性を一層高めることができる。アンダマン・ニコバル諸島に対艦巡航ミサイルを配置すればよいのである。もしマラッカが中国のインド洋とその資源への主たる航路であるとすれば、インド軍はその門を塞ぐと脅すことができる。そうすることによりインドは中国の悪事を抑止、あるいは妨害することができる。

 そのうえ、政治的、戦略的な優先度から考えると、中国の指導者が、インド洋における不確かな目的のため、東シナ海、南シナ海における中国の利益を危うくするとは考えられない。

 もし中国が海軍力を十分強化し、東、南シナ海を支配するようになれば別だが、それは遠い先のことである。したがってインドの指導者は海軍の兵力、戦術につき試行錯誤を行う余裕があると考えるのである。


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