チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年11月18日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

米国との軍事衝突を回避するために

 中国指導部にとってのプライオリティーは中国国内の問題であり、社会の安定のためにも経済改革は焦眉の急である。国内の経済格差是正を含む経済改革は富の再分配を伴うものだ。

 しかし、各既得権益グループと、象徴的な人物を叩く代わりに他の指導者たちに忠誠を誓わせるという手打ちをした以上、彼らの既得権益には配慮しなければならない。

 既得権益を潰して国民に再分配することが出来なければ、同じパイの大きさでは経済格差の構造を変えられない。貧困層に富を分配するために、パイ自体を大きくする必要があるということだ。

 中国の海外への経済活動の拡大が止まることはない。この経済活動は、南シナ海における海底資源開発や海上輸送路の管理なども含む「西進」戦略によって進められている。

 実際に中国指導部は、「一帯一路(“シルクロード経済ベルト”と“21世紀の海上シルクロード”)」というスローガンを掲げて、西への経済活動拡大を実践している。

 中国にとって、自国が有利に経済活動を展開するために必要な地域情勢の維持および創出は重要である。

 中国は、現在、唯一米国がその軍事プレゼンスをもって地域情勢を変える能力を有していることに危機感を有している。

 米国が作り出す地域情勢は、必ずしも中国にとって有利に働くとは限らないからだ。実際、南シナ海や中東などの地域で、米中の権益が衝突している。

 現段階では、中国が、特に通常兵力を用いた戦争で、米国に勝利できる可能性は極めて低い。中国は、海外での経済活動拡大と、それに伴う米国との軍事衝突の回避を、同時に追求しなければならないということだ。

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