2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年11月20日

 ISを打倒するためには、アサドも追放しなければならない。オバマ大統領のように、この現実に目を背けていると、シリア国民の生命や米国の安全保障への脅威を増大させ、問題を先送りするだけである。状況が悪化すれば、米国の選択肢は、更に限られたものとなり、高くつくことになるであろう、と述べています。

*出典:John Mccain&Lindsey Graham ‘To Defeat Islamic State, Remove Assad’(Wall Street Journal October.6, 2014)
http://online.wsj.com/articles/john-mccain-and-lindsey-graham-to-defeat-islamic-state-remove-assad-1412636762

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 共和党重鎮による、対IS戦略に関連したオバマ大統領のシリア内戦への対応批判です。中間選挙を前に書かれたせいか、オバマ批判のトーンが高く、少し党派的に過ぎる感じも受けます。

 確かに、シリアにおいてISを攻撃すれば、間接的にアサド政権を助けることになるのは避けがたいことですが、マケインとグラハムの言うように、ISとアサド政権を同時に倒す「二正面作戦」を追求するのは果たして可能なのでしょうか。また、アサドを追放すべきである、と言っていますが、具体的にどのような方策によってこれを実現するのか、この論説は、明らかにしていません。地上軍の投入を含む、本格的な軍事介入無しにこれを実現することは、事実上不可能と言ってよいでしょうが、現在の米国で、それが許されるとは思えません。

 米国のシリア反政府派内の穏健派に対する支援が不十分であったこと、アサド政権軍に対する軍事行動を行わなかったことが、ISの台頭を許す大きな要因であったことは間違いありません。しかし、米国の安全保障に対する、ISとアサドの脅威を比較すれば、前者がより深刻であるというべきでしょう。ISの勢力がここまで拡大し、反政府穏健派の実態が極めて弱体化した現在の状況下では、取り敢えず、シリア内でのISの拠点を攻撃するとともに、資金面や人員面での締め付けを強化することによって、ISのこれ以上の支配地域の拡大を防ぎ、徐々に勢力を弱めていくことが、当面、現実的な対応でしょう。つまり、アサドを後回しにする、オバマ政権のやり方以外には無いということです。

 中間選挙での共和党の大勝を受け、マケインは、上院軍事委員会委員長になるのではないかと言われています。その場合、この論説の内容の通り、対ISと対アサドの二正面作戦を主張すれば、米国の対IS戦略を混乱させる原因となり得ます。他方、アサドを同時に追放することを求めず、特殊部隊派遣などを含め、対IS軍事作戦への関与をさらに強めるよう要求するだけであれば、対応が後手に回りがちなオバマ政権を叱咤することになり、プラスに働くことになるでしょう。

  
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