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2014年12月4日

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絶対的な右四つと、多彩な取り口

 白鵬がすごいのは、こうした稽古を続けながら100kg近く、体を大きくしたことにある。来日当時は身長175cm、体重62kgしかなかったが、14年経過した今は192cm、157kg。モンゴル勢は魚、野菜を食べる習慣がなかったが、白鵬は、食事について「ちゃんこを基本にし、特段、苦労はなかった」と語っている。

 横綱昇進の2007年の7月場所以来、7年経ってもけがで休場したことは一度もない。それも基本練習のおかげだ。稽古場では、土俵に上がる前に四股、鉄砲を100回以上やる。ここまで徹底する力士はそう多くない。

図4 白鵬の得意とする右四つ左上手(手前の力士)。差し手(下手)が右腕になっている(出典:『大相撲の見方』(桑森真介著、平凡社新書)
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 「小学時代から肥満で、相撲しか選択肢がないという日本人力士と異なる。脂肪の少ないだけでなく、柔らかい筋肉がついていったのだろう」と専門家は分析する。

 剛と柔をこうして培った白鵬は、「右四つ左上手」という絶対的な必勝の型を持つ。四つは両者が胸を合わせた状態のことで、右四つは、差し手(下手)が右の組み方をいう。この形から、低い姿勢で多彩な攻めを展開する。

 決まり手は、四つに組んだまま、相手を土俵外に出す「寄り切り」が最も多いが、右四つ左上手からの「上手投げ」「上手出し投げ」などの投げも少なくない。大鵬よりこの上手投げなどの決まり手が多いとも言われる。絶対的の得意の型から相手の重心をずらし、投げに打つタイミングは絶妙だ。白鵬が安定しているのは、それだけではない。得意の型以外でも勝てるところにある。それは今年1年の決まり手を見ても言える(図5)。

図5 今年1年間の白鵬の決まり手
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