2024年11月25日(月)

学びなおしのリスク論

2014年12月26日

 たとえインフルエンザウイルスに感染しても、高熱が出るなどの発症は免れる人もいるという。「感染イコール発症」というわけではないのだ。

 ワクチン接種に効果があるのかも気になるところだ。インフルエンザウイルスには「型」があり、日本では「A亜型」2種類と「B型」1種類の3つのインフルエンザウイルスがワクチン株として用いられる「3価ワクチン」の接種が行われる。

 「ワクチンにはある程度の予防効果はありますが、打ったからといって100%予防できるわけではありません」と、大石氏は話す。

 毎年流行するインフルエンザへの対策として、行政、公共交通機関、企業などがとれることはと聞くと、「それが極めてむずかしいのです。社会が回っている状況で、たとえば公共交通機関がいちいち対策を打つことは難しいでしょう」と話す。

 「ですので、市民ができることをしていただくことが重要な対策となるわけです。マスクをしてください、日頃から手洗いをしてください、といったことです」

新型インフルエンザの脅威

 「季節性は準備しておくのが大切ではありますが、ある程度しょうがない部分もあります」と大石氏は話す。「一方、新型インフルエンザは異なります」

 インフルエンザウイルスは増殖するとき、遺伝子の含まれるRNAをミスコピーしやすい。そのため、時に人のこれまでの抗体では対処できない抗原をもったインフルエンザウイルスが現れる。これが「新型インフルエンザ」だ。多くの人がこのウイルスに対する免疫を獲得していないため、全国的かつ急速に蔓延し、人びとの生命や健康に重大な影響をあたえうる。

 2009年の新型インフルエンザを覚えているだろうか。5月、カナダから帰国した高校生が成田空港の検疫で「H1N1亜型」の感染が認められたと報じられると、薬局からからマスクがなくなり、テレビでは連日マスクをした人びとの通勤風景などが報じられた。

 「季節性インフルエンザでの入院数は毎年1万人ほどですが、新型インフルエンザの年の入院者数は増加しました」

 幸い、この際は国家的危機になるほどの深刻な状況には至らなかった。「2009年型インフルエンザ」が原因となった国内死亡者は203人(厚労省発表)。例年の季節性インフルエンザの年間死者数とそう変わらない数にとどまった。


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