一般には馴染みがないかもしれないがベースメタルやレアメタルのスクラップを扱っているOHGITANI SINGAPOREという企業の40周年記念パーティーが11月末、シンガポールのリッツカールトンで行われた。パーティーには160人以上の招待客が日本や世界各地から集まった。
扇谷(本社=大阪市西区)は、約40年前からシンガポールでリサイクルビジネスを継続している老舗の企業である。支店の設立が1970年で、工場の設立が1973年だ。当時は、アメリカの半導体産業の進出先がシンガポールであったから、テキサスインスツルメンツや、ナショナルセミコンダクターから発生するリードフレーム(半導体パッケージに使われる部品)のリサイクル材を扱うためにシンガポールに進出したのだ。
シンガポールのジュロン工業地区と沖待ちする多数の船
(WAYNE EASTEP/GETTYIMAGES)
(WAYNE EASTEP/GETTYIMAGES)
高度経済成長の最中にあった当時の経営者は何事にも積極的で多少の失敗があっても臆することはなかった。前後して松下電器や三洋電機も進出を決めたために静脈産業としてリサイクル企業の機能が生かされたのだ。
そんな時、当時課長だった池上武さんが社長に抜擢されて、シンガポールにやってきた。初めは短期出張のつもりで現地に赴いた池上さんは、何やかやと理由をつけられて長期駐在になってしまったと苦笑いをされていた。池上さんは「僕はアホやから務まった」とおっしゃるが、とんでもない謙遜である。
ひと口に40年というが景気の浮き沈みの中で40年間も事業を継続するのは大変なことである。超優良企業であった大企業にも陰りが見えるなか、中小企業にとって海外での経営は筆舌に尽くしがたい苦労があったはずだ。