アメとムチを使い分けるシンガポール
わが社(AMJ)がシンガポールに現地法人を設立したのはわずか2年前である。発展目覚ましいアセアンの中心にあるシンガポールの立地条件や、レアメタルビジネスのグローバルシフトを目的として現地法人を設立したのである。前も後ろもよく判らないシンガポールでの経営について池上さんから懇切丁寧な指導を頂いた。
そうするうちにシンガポール政府の強かさも勉強することになった。確かにシンガポールには税制上の優遇措置はあるが、一方で義務や責任も多く課せられるシステムになっている。
例えば、雇用問題や土地の活用についての義務が発生する。扇谷の場合、シンガポールのジュロン工業特区での土地の賃貸期間は50年である。池上さんも工場用地のリース期間が終了する前に、新しい場所に移転をしなければならないのだ。幸運にも良い条件の土地が見つかったので、2015年には新工場への移転も決定したから良かったが、その経費負担も馬鹿にはならない。
日本は貿易立国である。さらに国際化を進め海外拠点に進出して行かなければならないが、昨今の日本企業にはハングリー精神が不足しているように思う。海外で生活することは決して楽ではないが、国内で何もしなければ蛸壺状態の中で茹蛸になってしまうことを理解するべきだ。過去の成功体験の繰り返しをしていてはシーラカンスになってしまう恐怖を感じなければならない。
常に困難に立ち向かい挑戦を続けなければ資源のない日本は持たないことを再確認するべきだ。「進取の気風」がない会社は朽ち果てて行く運命である。40年前の日本人は臆面もなく海外に進出していったのである。
2015年を迎えるにあたりもう一度原点に立ち戻り二つの言葉を噛みしめたい。「継続は力なり」と「進取の気風」の原点に立ち戻りたいものだ。
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