2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年1月14日

 しかし、米国が安保、経済で引き続き弱さをみせれば、アジア諸国はヘッジよりも中国の野心に迎合することになってしまう。米国と日本は、中国と経済的影響力で競争したいのであれば、国内の特殊利益を克服し、TPP合意を早急にすべきである、と論じています。

出典:‘Jockeying for Trade in Asia’(Wall Street Journal, November 27, 2014)
http://online.wsj.com/articles/jockeying-for-power-in-asia-1417115058

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 これは、中国がアジア諸国との間でFTAを締結しているのに対して、日米は国内の特殊利益に振り回されTPP交渉で足踏みしていることを批判した社説であり、正鵠を射た内容です。

 日本としては、台湾とのFTAを検討するとともに、TPPについての日米合意を早く完成し、台湾もその中に取り込む方向で対処するべきでしょう。台湾を孤立させず、経済的に日米の側に強く結びつけることには、大きな意義があります。

 今アジアでは、中国中心の貿易秩序か、日米中心の貿易秩序かが問われています。これには戦略的な意義もあります。TPP合意は豚肉の輸入急増の際にどういう条件でセーフガードが発動できるかというような問題のために行き詰っているようです。日米は、そうした要請などに振り回されず、必要な場合は、補償措置も考えて早期妥結を図るべきでしょう。特定の産業が自らの利益のためにTPPに反対し、その成立を阻止することは、容認されるべきではありません。

 中国のFTAについては、自由貿易が推進されるのであれば、それはそれで結構ですが、国内に、自由な市場経済というよりは中国的特徴をもった市場経済しかない中国が、本当に自由貿易を推進できるのか、強い疑問を持たざるを得ません。政治も経済も究極のところ中国共産党の独裁で決まる国が、自由貿易を原理として守ることはないでしょう。これは、2010年の尖閣沖衝突事件に関連したレアアース禁輸措置の例を見ても明らかです。中国が、リカードの比較優位説を信じ、自由貿易のメリットを深く信じている自由貿易論者であるはずはありません。この点、アボットやロブは、中国に甘いように思われます。

 日本はTPPの早期妥結、そして、将来的課題として、できればその体系への中国の取り込みを目指すべきでしょう。豚肉などの特殊利益で全面的に妥協しても、他の面でより大きい利益が得られるでしょう。これは、そのまま米側にも当てはまることです。

  
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