2024年7月13日(土)

中島厚志が読み解く「激動の経済」

2009年7月30日

 一方、政府も、企業の生産性を高める対策や産業構造をさらに高度化させる政策を即刻大胆に実施すべきである。それは、低炭素革命といった、イノベーションにつながり、創業者利潤が見込める新しい成長分野の創出を強力に推進することもある。くわえて、欧米企業に比べて生産性が劣る非製造業部門や中小企業の生産性を上げるような政策を打つことも欠かせない。

 それは、国内市場で過当競争があるのであれば、創意工夫や展開力を持つ企業を後押しする一方で、努力が不十分な企業には退出してもらうことに資する大胆な規制緩和や産業政策も行わなければならないということである。

 たとえば、大胆な規制や枠組みの見直しを社会保障制度や農業分野などにも広げれば、それだけ日本の産業構造は高度化し、付加価値の上がる産業発展につながる余地ができる。医療では、現行保険の枠組みとの兼ね合いをどう図るかとの難しい問題はあるにしても、自由診療の余地を広げれば、専門医の増加と付加価値の高い医療行為、すなわち付加価値の高い医療産業の発展につながる面もでてこよう。

 このような見直しを行うことは、ここ10年来日本経済が陥っているデフレ体質や賃金伸び悩みの是正につながる可能性もある。現在のデフレの要因の一端には、値を取ろうにもとれない、付加価値を上げようにも上げられない経済構造があるようにも見えるからである。そうであれば、ニーズが存在しているところに高付加価値の財、サービスが提供されることになれば、その分物価が上がりやすくなるとも言える。また、当然ではあるが、高付加価値の財・サービス提供が増えれば、それだけ専門性の高い人材が増えることになり、賃金上昇の余地も増えることになる。

 日本企業の利益率の低さは、企業努力がもたらしているばかりではなく、経済産業構造や国の政策も大いに関係している。そして、現在の企業利益率が上がらない経済構造や規制などの枠組みが、伸びない賃金やデフレの一因になっている可能性すらある。

 もちろん、ただでさえ低成長な中で、雇用をそれなりに維持している企業やいままで地域経済を支えてきた企業などに退出を迫ることは容易ではない。しかも、こうした企業などは往々にして発言力があったりもする。しかし、企業の世代交代を阻害するような規制や枠組みを維持していながら、活力ある企業の活躍を期待することに限界があることも意識すべきである。

 当面は景気と雇用の回復が一義である。しかし、いずれ雇用者の賃金を上げ、デフレ体質を克服していくのであれば、企業が収益力をもっと飛躍的に上げる努力を行うことが欠かせない。政府も、一部企業の退出を促してでも、果断に産業構造高度化や企業の生産性向上に資する対策を打っていかなければならない。日本の大企業利益率の低さは、改めて現状の政府と企業の努力では足りないところがあり、もっと積極的かつ大胆に産業政策や経営戦略を行わねばならないことを示している。

 

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