今般のスリランカの政権交代は、大きな地政学的意義も持っています。中国は、インドの周辺国に中国が使用できる港湾を、インドを取り巻くように設ける、いわゆる「真珠の首飾り」戦略を推進して来ました。スリランカの政権交代により、この構想も中核的な部分を欠くことになります。これは、中国にとり大きな打撃であり、インド、ひいては民主主義陣営にとり大きなプラスになります。
また、今回の政権交代は、中国によるインフラ投資の限界も示しています。新政権が中国による港湾プロジェクトに関する腐敗について調査するとしているのが良い例ですが、中国による対外投資・対外援助には腐敗がつきまとう傾向にあります。そして、目的は専ら中国自身の利益を図るということがあからさまであり、こうしたことが受入国の国民の怒りを買い、中国の企図が挫折することがあります。中国によるダム建設が軍政崩壊への引き金を引いたミャンマーと類似した構図であると言ってよいでしょう。
なお、社説が指摘するように、新政権の施策にラジャパクサ支持者が抵抗する可能性は小さくありません。日本としても新政権支援策を早急に検討すべきと思います。
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