2024年4月26日(金)

学びなおしのリスク論

2015年2月12日

 「でも、夜中に目が醒めるといった人は、50歳代では半数近くに上ります。大事なのは、不眠症の症状によって、日中に問題が起きるかどうかです。これらの問題が起きなければ、不眠症とはいえません」

(画像:iStock)

 なるほど。不眠により日中に問題をきたしているかどうかが重要というわけだ。「逆に、不眠症の度合いは低くても、日中の生活に問題があれば、それも不眠症と診断されます」と三島氏は付け加える。

 不眠と他の病気との関わりは深い。その代表例の一つが不眠とうつ病などの精神疾患の関係だ。うつ病に不眠が伴っている場合もあれば、不眠からうつ病に発展する場合もあるという。

 まず、うつ病に不眠が伴っている場合。「不眠の4割ほどは、うつ病などの精神疾患によるものです。慢性的な不眠があるときは、うつの問題がないか注意する必要があります」。

 一方、不眠がうつ病に発展する場合はどうか。「うつ病の発症リスクからすると不眠の影響力は大きいです。リタイア世代を対象とした調査では、体の病気、肉親との死別、過去のうつ病経験などの要因よりも、慢性不眠を抱える人のほうが、将来うつ病になりやすいという調査結果もあります」。

 不眠と生活習慣病などとの関係もいわれている。「不眠を対象とした調査では、糖尿病のリスクをとくに上げ、他に狭心症や心筋梗塞、また夜間高血圧などの症状を悪化させるといった結果が出ています」。

 だが、「不眠症から生活習慣病へ」といった単純な筋道で語り切れるものではないらしい。

 「がんや生活習慣病の要因として、運動不足、過度な栄養摂取、喫煙といったことはよくいわれますよね。これらの要因はすべて、睡眠の質を悪化させることにも関係しているのです」

 三島氏の話から感じられたのは、不眠を他の病気と切り離して考えることはできないということだ。不眠が他の病気につながりうるし、他の病気が不眠につながりうる。逆に快眠が健康をもたらすし、健康が快眠をもたらす。

 「国民の健康増進を図るため国が策定した『健康日本21』の保健指導には、栄養・食生活、身体活動・運動、たばこなどの項目と並んで、休養・こころの健康づくりがあります。どれが最初にありきということでなく、すべて一緒にやらなければなりません」


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