2024年12月22日(日)

学びなおしのリスク論

2015年2月12日

 筆者が会社勤めをやめた理由を、真顔で「朝が苦手だったから」と周囲の会社員に告げると、いつも笑われる。だが、夜型生活者にとって朝の通勤とは切実な問題だ。寝不足の中で満員電車に揺られ、会社にたどり着くだけでも相当な負担がかかるのではないか。それが週に5日、人生で40年も続くとなると……。

 寝不足以外にも、睡眠に問題を抱える人は多くいる。眠れない状態が続き昼の生活にも支障をきたす不眠症、本人が気づかない場合もある睡眠時無呼吸症候群などなど。日本人の5人に1人は、睡眠に問題を抱えているともいわれている。

 人生の少なからぬ時間は、睡眠に費やしているのだから、こうした睡眠障害や睡眠不足のリスクとその対策をきちんと考えておいたほうがよい。そんな思いをもちながら、今回は、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の三島和夫氏を訪ねた。三島氏は、人の睡眠や体内時計に関するメカニズム、さらには睡眠障害の病態生理と診断治療法の開発などの研究をしてきた、睡眠の専門家だ。

 睡眠の問題にはどのようなリスクを孕んでいるのか、対処法はあるのか。睡眠障害と睡眠不足のリスクについて話を聞いた。

三島和夫氏。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部部長。秋田大学医学部医学科卒業後、同大学医学部精神科学講座助手、講師、助教授をつとめ、2002年、米国バージニア大学時間生物学研究センター、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員助教授に。2006年、国立精神・神経センター精神保健研究所精神生理部部長。2010年、独立行政法人に改組し、現職。不眠症、睡眠・覚醒リズム障害、冬季うつ病などの睡眠に関わる研究とともに、国立精神・神経医療研究センター病院での診療も行う。共著書に『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(日経BP社)などがある。医学博士。

不眠とうつ、不眠と生活習慣病は、密接不可分

 眠りになんらかの問題がある状態を睡眠障害という。代表的な症状として、三島氏がまず挙げたのが「不眠症」だ。寝付きが悪い、寝付いても夜中に目が醒める、朝起きてもぐっすり眠った感じを得られない、早く目が醒めてしまうといった症状があること、それらの不眠症状によって眠気や倦怠感、能率低下、いらいら感などの日中の不調が週3回以上あり、少なくとも3カ月続くことが臨床的に問題となる慢性不眠症の条件とされている。


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