「双方の信頼の喪失は壊滅的だ。モスクワは西側を信頼しておらず、西側もモスクワを信じていない」「この種の戦いは核戦争へと導くことは避けられない」
原因は、クリミア半島の併合や、ウクライナ東部の内戦に介入し、第2次世界大戦後の秩序を冒したロシア側にあるのではなく、北大西洋条約機構(NATO)の側にあるのだという。
「NATOの東方拡大は欧州の安全保障の秩序を破壊している。第2次世界大戦中、ドイツは東方への影響圏の拡大を図ろうとした。私たちは教訓を学ぶ必要がある」
米国を批判
「危険な勝利主義の精神構造」
冷戦への認識は、ウクライナ危機が激化するにつれ、その都度、深まった。
ロシアがクリミア半島を併合した昨年3月、欧米の対露制裁が発動されたことを鑑み「次なる冷戦を防がなくてはいけない」と述べた。そうして、ウクライナとロシアへ、両国民が受け入れられる解決策の実行を促した。
11月、ベルリンの壁崩壊25周年イベントでは、「われわれは冷戦勃発の縁にいる」と言った。
そして、ウクライナ東部での死傷者が激増する中で行われたシュピーゲル誌のインタビューでは「私はすでに、ありとあらゆる新冷戦の兆候を見ている」とさらに突っ込んだ。
ゴルバチョフ氏は現役時代から直截な表現を用いない。演説での言い回しは時に難解で人々にその意味を考えさせる。
対露制裁を主導する米国にはいま「危険な勝利主義の精神構造がこびりついている」のだという。
その上で「米国には政治的な根本改革、ペレストロイカが必要だ」と訴える。
「米国は緊張と不安定に乗じて、混乱状態に介入している。圧力の政治の展開を容易にするため、敵をわざと作り出している。米国はいまだに20世紀の古い政策の虜になっている。敵がいなければ、彼らは生きていけないのだ」