企画に込めた石塚の思いはこうだ。少年院に収容されている少年たちは、家族との関係が希薄な場合が多い。現に水府学院の矯正教育プログラム(通常11.5カ月間)を終え、本来であれば家庭に帰るところだが、引き取り手がなく出院が延びるケースがある。また面会にもなかなか来ずに、引き取りにも積極的でない保護者も少なくないと聞いている。
こうした関係を少しでも修復するための一助として、親と子のタグラグビー交流会を開いてはどうか? というものだった。
それをベースに地域社会が院生たちの社会復帰を応援していることを示すと共に、出院後の就職に繋げるため、地元企業の経営者や商店主にも参加してもらおうという案を加えた。再犯率を抑えるためには仕事に就くことが最大の要件だからである。
運動会に保護者が参加しているのだから、親子関係の修復と再犯を抑えるという主旨からこの企画案は実現性が高いと考えていた。
それが石塚の思いであり、本プロジェクトの基礎になっている。
ちなみにプロジェクト名に「絆」という言葉が使われているのは、親と子の絆を修復したいという石塚の思いからだ。
以後、小沼と共に何度か企画案を見直しながら本プロジェクトを提案し、社会に開かれた講座という主旨によって実現に至った。
子どもの受け皿としての社会教育
学校教育と社会教育は車でいう両輪の関係である。
そのバランスが悪ければ真っ直ぐに走れるはずがない。学校と地域社会、または外部の専門家がバランスよく教育に関わり、学校だけでは学べない様々なことによって、子どもたちは心身ともに健康な大人へと育っていくものだ。
少年院に収容される少年たちを容認するわけではないが、本人だけに責任があるとは言えないはずだ。学校、家庭、地域、さらに言えば社会に広く問題の種があると考えられはしないだろうか。
子どもの受け皿としての社会教育について小沼はこう語る。
「平成18年の教育基本法の改正によって生涯学習の理念が明示され社会教育の重要性が記されました。学校で行う教育だけでは限度がありますので、子育ては地域の大人たちが真剣に学校に入り込んで行わなければいけない時代になっていると思っています」