効果としては、モデルとなる健全な社会人に接する機会になると同時に地域社会との繋がりの一助とする。また、ルールを守ることや審判、対戦相手、仲間を尊重することを学ぶ機会となることに加え「One for all,All for one」「ひとりは社会の為に(利他の心)」のラグビー精神を学ぶ機会とする。
また、外部の参加者に対しては、少年たちの理解及び、少年院の取り組みに理解を深める機会にすると同時に協力雇用主の登録促進の機会とする。
こうしたことを踏まえて、当日は院生たちを学寮ごとに分けてリーグ戦を行い、それぞれ1位チームが絆チームと対戦するという内容である。
矯正教育の中に生涯学習という視点を
この企画のもっとも大切なところは、絆チームが院生とタグラグビーを通じて交流することにある。人はスポーツに夢中になっていると隠しようもない内面が出るものだ。その姿を見て、感じて、なぜ彼らがここにいるのか、その背景には何があるのか、そこに思いを巡らせることにある。その上で少年院の取り組みを理解してほしいと思う。
その理解こそが協力雇用主の登録に繋がり、少年らの社会復帰を促すことになる。
これまでの生涯学習移動講座とは主旨が異なり、講師と院生だけの関係から、社会へ開かれた講座へ変わったということである。
本プロジェクトは茨城県の教育庁生涯学習課に勤務する傍ら、茨城県ラグビーフットボール協会の副理事長を務める小沼がリーダーとなって具体的準備が進められた。
「いま我々が成すべきことは、少年院が行っている矯正教育の中に生涯学習という視点を取り入れて、一般の社会人に少年院を知る機会を増やすことだと思うのです。一人でも多くの理解者を増やし、少年たちの社会復帰の応援団を増やすことが大切です。そのうえで協力雇用主が増えて、実際に社会復帰が実現して、更生していく子たちが増えていく。それが本来目指すべきところですが、まずはこうした取り組みを増やすことではないでしょうか。茨城県に限らず、他の県でも外部の理解者を積極的に増やす試みを考えることです。再犯を抑制することは、より良い社会を築くための課題の一つです」
社会と繋がる講座を目指して
「水府学院『絆』プロジェクト~タグラグビー交流マッチ」が企画された背景にはひとりの人間の熱い思いがある。その経緯についても触れておきたい。
「今のままでは水府学院内に留まってしまう。社会と繋がる講座にするにはどうすればいいのか?」
2007~2009年まで水府学院でタグラグビーの講師を務めていた元ラグビー日本代表石塚武生氏のこの言葉に始まる。