2024年11月22日(金)

ルポ・少年院の子どもたち

2015年2月23日

 「そうすれば、たとえ親が無関心であっても、地域の人や外部の専門家が、その子の個性や素晴らしさに気づいてあげられるかもしれません。その子の話を聞いてあげられるかもしれません。落ちこぼさないための仕組み作りが必要です。受け皿となる地域社会の取り組みができて、それを子どもたちも理解すれば、非行に走って少年院に収容されるような子も少なくなっていくと思うのです。それが少年院出院後に受け入れる体制にも繋がっていくのではないでしょうか。まずは地域全体で子育てをするという雰囲気を作ることが必要であり、大きな課題だと考えています」

 一朝一夕に地域社会を変えることは難しいが、たとえば高齢者については知識や経験の宝庫という見方ができる。取り組み方次第では、それらの集積によって新たな価値がその地域に芽吹くことだって考えられる。

 これからは高齢者が社会を支えていかなければならない時代である。社会教育という大きなフィールドが、その方たちの第2のデビュー戦を待っているということだ。

 学校教育から落ちこぼさないことも重要だが、様々な大人の目で子どもたちを見守ることができれば、非行の芽を摘む機会も増えることになる。

 それには希薄な人間関係そのものを反省しなければ根本的な改善には繋がらないだろう。

■編集後記(ウエッジ編集部)
「ルポ・少年院の子どもたち」では、2012年の夏以降、不定期掲載ですがラグビー講座をはじめライフセービング講座や障害者アスリート講座、また法務教官や少年たちとの面談を通じて水府学院を取材して参りました。
少年院という特殊性ゆえに閉ざされた感のある施設ですが、まったくではないにしろ訪れる前に抱いていた先入観はすでにありません。むしろ教育施設というイメージに再構築され、幼さの残る少年たちも、厳しくも寄り添い続ける教官たちも、出院後の社会復帰に向けて苦心している様子が伝わってきます。
「水府学院 絆プロジェクト~タグラグビー交流マッチ」の企画は、「石塚武生さんが、いつか社会と繋がる講座にしたいと考えたものです」と、2012年6月第1回の「ルポ・少年院の子どもたち」の取材時に著者から水府学院に提案されました。その後、取材の度に提案を続ける場面を見て参りました。
その石塚氏も本稿の小沼公道氏との出会いから水府学院で講師を務めるようになりました。本プロジェクトはそれぞれの思いがパスのように繋がれ、石塚氏他界から5年半が経ち、ようやく社会に繋がる講座が実現するに至りました。
これは小沼氏が説く社会教育のひとつであることは言うまでもありません。
再犯は新たに加害者と被害者を生むことになりますから、社会にとって何もメリットはありません。施設の性質上、表現に制約はあるものの、「ルポ・少年院の子どもたち」を通して、一人でも多くの理解者を増やしたいと願っています。

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