2024年12月10日(火)

世界の記述

2015年3月2日

 2013年7月にデトロイト市が約180億ドルの負債を抱えて裁判所に連邦破産法第9条に基づく更生申請を行った直後、デトロイト市の郊外に自宅とオフィスの両方がある私のところへ米国内と日本から幾つもの問い合わせやインタビューの依頼があった。その多くは破産法そのものが日米で異なるために日本人にとって理解するのがやや難しいという理由による質問だったのだが、中には苦笑いせざるを得ない質問もあった。

 前年の12年に再選を果たしたバラック・オバマ大統領は1回目の任期を景気後退に苦しむ米国経済の立て直しに費やしたが、その中でも大きな仕事が米国の自動車産業を救済することだった。

年初にミシガン州のフォードの工場で演説するオバマ大統領
(GETTYIMAGES)

 かつてビッグ3と呼ばれた栄光の日は遠く、すでにデトロイト3と呼ばれるほうが多くなっていた米国自動車メーカー3社のうちゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラー(現FCA US)を政府の指揮下で管理破産させて再生することだった。米国政府は巨額の資金を注入して2社を再建し、その後国内経済の好転に伴い新しく生まれ変わったGMとクライスラー、そして自力で再建したフォードは再び元気になった。

 私が苦笑いした質問は、再選を果たしたオバマ大統領が演説の中で「デトロイトは見事にカムバックした」と自慢していたのにデトロイト市は破産申請してしまったのはどうしてか、というものだった。明らかに米国自動車産業の象徴としての「デトロイト」とデトロイト市を混同したものだった。


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