実際に運用している人は一般のサラリーマンというよりも、ベンチャー企業経営者、弁護士、公認会計士、医師など世間的には高額所得者が多いようだ。変動の大きい金融市場の中で、少しでも手持ち資産を増やそうとして運用先を検討する中で、「マレーシアでの運用はベストではないが、日本に置いておくよりはベターだ」(匿名希望の運用者)ということのようだ。
このほか申請の多いアジアの国は中国、バングラデシュ、韓国、台湾などで、中でも昨年からは中国人富裕層の取得が急増した。
ビザの取得には一定の資産収入が必要
現在、外国人が長期滞在できるこのビザを取得するためには、一定の保有財産と、安定した収入が求められる。それでも、90年代までは、オーストラリアやニュージーランドでもこのような長期滞在ビザを取得できたが、2000年以降はビザ取得のためには数千万円から数億円の保有資産が求められるなど資格要件が非常に厳しくなった。マレーシアのハードルはこれらの国と比較すると低い方で、現状ではお金持ちでなくても取得が可能なレベルだ。
ビザ取得のための資格要件は、50歳以上と50歳未満に分かれている。50歳以上の場合は、35万リンギット(1リンギット=33円で計算して約1155万円以上の流動資産、例えば預貯金、有価証券など)と、毎月1万リンギット以上(約33万円)の収入(マレーシア国外の収入)があることの証明が必要になる。50歳以下では、50万リンギット(約1650万円)以上の流動資産と、1万リンギット以上の月収が必要と要件が高い。
これに加えて50歳以上は15万リンギット(約495万円)以上、50歳未満は30万リンギット(約990万円)の定期預金口座の開設を義務付けられる。ビザ取得期間中はこの定期預金口座額を維持する必要があり、この定期には3・3%の金利が付く。ビザを取得すればこうした定期口座を何口も開設することができるため、富裕層にとって高い金利の恩恵を課税されずに受けられる。欧米では外国旅行者でもその国の銀行に口座を開設できる。マレーシアでは外国人は個人の口座は原則開設できないが、このビザがあれば開設できる。ビザの取得には申請から3カ月程度は掛かるという。
マレーシアには日本のみずほ銀行と提携している同国最大のマイバンク(MAYBANK)のほか、東京三菱UFJ銀行と提携しているCIMB、外資系の香港上海銀行(HSBC)などがある。日本と同じように政府が預金に対しては補償しており、金融制度は整備されている。おもしろいのは、各銀行が競うようにして金利キャンペーンを行うことで、場合によっては年利4%以上にまで上がることもある。金利に目ざとい投資家は、このキャンペーンを狙って口座間をタイミング良く預金移動させれば、金利水準が高いためかなりの金利収入を見込める。しかも金利には課税されない。