年収1000万円以上のアッパー層が狙う湾岸マンションにも500万~600万円の中堅層が流れる郊外マンションにも価格高騰の波が押し寄せ、需要を減退させはじめている。
好調なはずのマンション市況に異変が生じ始めている。不動産経済研究所(東京都新宿区)が5万6000戸と予想していた2014年の首都圏のマンション供給戸数をここに来て一気に引き下げたのだ。マンション市場調査が年初の予想をたった半年で下方修正するのは極めて異例。08年のリーマン・ショック前のミニバブル再燃かと沸き立っていたマンション市場だが、いったいどうなる。
今年春以降、奇妙な現象が不動産業界で話題になっている。「池袋」や「上野」、「新宿」などのエリアのマンションの売れ行きが好調なのだという。だが、本来マンション立地として人気なのは表参道や広尾、自由が丘など地位(じぐらい)の高いエリア。池袋や上野、新宿などは、エリアは都心とはいっても環境は必ずしもいいとはいえず居住地としては人気が高くないエリアだったのだ。
では、なぜ今、こういったエリアのマンションが人気なのか。理由は「名前」にある。居住地としては人気のないエリアでも世界、とりわけアジアでは名前が通る。こういったエリアのマンションを「よく知られたエリア」の物件として台湾やシンガポールの富裕層が買いあさっているのだ。
昨年の後半から今年にかけてマンション市場の好調さを支えてきたのは、実はこうした海外の顧客たちだ。
例えば昨年、三菱地所が東京・千代田区で手掛けた「ザ・パークハウス グラン 千鳥ヶ淵」(最多販売価格帯2億7000万円)も発売した日に売り切れる即日完売となり業界で話題となったが、これも「中国や台湾などアジアの富裕層が購入者のかなりの割合を占めた」(不動産業界関係者)という。三菱地所の担当者によると「企業経営者や医師、弁護士といった富裕層に人気で、申し込みの平均倍率は5倍超」で、無理に外国人に売る必要はない状況だったというが、実態は「3割から5割が外国人だった」(同)。