2024年12月22日(日)

したたか者の流儀

2016年5月13日

 前作のベルギー話、評判が良かったようだ。書き手としては心残りがある。聴き足らず、語り足らずだ。そもそも日本は、ベルギーについて知らない。知らなくてもよかった。しかし、パリのテロ以来そういうわけにいかなくなったのだ。なんせ、よその国まで出張ってくるのだから。

 チョコレートは知っている。ビール。ベルギーダイヤモンドという詐欺事件も覚えている。それくらいか。言われると思い出すのは、アガサ・クリスティーの名探偵ポアロはベルギー人とされている。エルキュール・ポワロは、ブリュッセル警察の元刑事というふれこみだ。難事件を解決するが、「オリエント急行」で見せたようにとぼけた人情家でもある。語学の天才アガサ・クリスティーの創造物だけあって、その名前からもひねりが利いている。

 エルキュールはハーキュリーで、怪力という意味。ポワロはフランス人でも気が付かない仕掛けがあり、少し綴りが違うが、“薄のろバカ”というフランス語の俗語で、日本語にそのまま訳せば“名探偵/怪力間抜け”と言ったところだ。この矛盾が面白いのだが、ジャポニカにはわからないだろうか。彼女に確かめてみたいが、聞けば“あんたさん、考えすぎや”というかもしれないが。

ビート畑という名の大作曲家

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 もう一人、世界中で最も有名なベルギー人は、バン・ベートーベンだ。勿論出生地主義では、ドイツ人で間違いない。ドイツでは、フォン・カラヤンというように、バンではない。これは、源“の”とか平“の”と貴族につける“の”に当たる。土地の名前に“の”を付けると荘園領主となるのは万国共通のようだ。さて、バン・ベートーベン。あの方の名を日本語にすれば、ビート(砂糖ダイコンまたは甜菜糖)ホーベン(畑)のことで、ベルギーの長閑な平地に永遠に続くビート畑を一度でも見たことがある人は、楽聖は紛れもなくベルギー人だと気が付くのだろう。

 ベルギーに行けば、至ることころにVANさんがいるが、VONはドイツ人だ。


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