中国の対露支援の動き
さらに米国の思惑を邪魔するかのような動きを見せているのが中国だ。
ロシアはかねてより、欧米の対露制裁は無意味であると発言してきたが、2014年12月には、王毅外務大臣は「ロシアは危機を乗り越える力がある」として、必要であれば中国は可能な限りの支援を行うと主張したし、高虎城商務相はルーブル危機にもかかわらず、両国間の貿易は1000億ドルの目標を実現するだろうと予測した。
また、昨年は、ロシアの価格面での譲歩があったと報じられているとはいえ、中国がロシア・ガス購入の4000億ドル、30年の契約に署名したことも話題となったし、中国とロシアの李克強、ドミトリー・メドベージェフの両首相が、カザフスタンにおける会談で鉄道、インフラ、および、中国北部にあるロシアの極東地域開発に関する広範囲な契約に調印したとも報じられている。また、中国側は、借款やロシア国内へのインフラ投資を大きな規模で行う用意があることも示している。
実際にもそのような動きはすでに見られており、例えば、3月末には、中国がロシア初の高速鉄道となる「モスクワ―カザン高速鉄道」(総工費1兆680億ルーブルと推定)を建設するため、中露で折半出資の合弁会社を立ち上げ、中国は3000億ルーブル(約6300億円)を投資する計画が報じられている(内、500億ルーブルは法定資本としての投入、2500億ルーブルは中国の各銀行からの20年契約での融資の形をとる)。
こうした動きは、明らかに欧米の対露制裁の効果を減じうるものである。
アジアインフラ投資銀行に参加する多くの欧州諸国
また、中国メディアは、対露支援は上海協力機構 (SCO)やBRICSのような枠組みを利用して行うべきだという識者のコメントも引用しているが、ここで注目すべきことは、SCOもBRICSも欧米諸国が全く加盟していない組織だということである。
中国の外貨準備高は、3.89兆ドルと言われており、少なくとも帳簿上では世界最大となっている。この経済力を糧に、中国はグローバル経済への新たな挑戦を始めている。それこそが、中国が2015年中に業務開始を目指しているアジア向けの国際開発金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)である。その創設の目的を、中国は日米が主導するアジア開発銀行(ADB)では賄いきれていない 、年々増額するアジアのインフラ整備に必要な資金対策を代替・補完的に行うことだとしているが、この動きが、米国主導のブレトンウッズ体制への挑戦であるというコメントは頻繁に見られる。実際、ADBを主導する日本と米国は、AIIBのガバナンスの欠如、出資の不透明性、融資の高い基準での維持への疑問などの理由で、参加を見合わせている状況だ。