解体 ロシア外交

2015年4月9日

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 だが3月12日にG7メンバーとしては始めて英国がAIIBへの参加を表明してから、31日の申請期限までに連鎖的に参加を表明し、結果的に40カ国が参加を表明した。欧州の大国も多く参加していること、特に英国の参加は米国にとって大きな打撃だったという。英国は米国の長年の経済パートナーであったが、ここにきて、英国が米国を裏切ったとも読み取れるからである。なお、多くの欧州諸国が締め切り直前になってバタバタとAIIBに参加表明をした一つの理由に、上述のように対露制裁で米国と経済の運命を共にすることに対する脅威が増してしまったということもあると言われている。

 そして、当初難色を示していたロシアもブラジルと同日となる3月28日に参加を表明した。これにより BRICSの南アフリカを除く全てのメンバーがAIIBに参加表明をしたことになる。

 なお、BRICS諸国は定期的に首脳級をはじめとした諸レベルの会議を開催し、2014年7月には、国際開発金融機関であり、既にある世界銀行と国際通貨基金に代わってインフラ整備資金などを融資することを目的とする「新開発銀行」(「BRICS開発銀行」とも)の設立にも署名している。ロシアのシルアノフ財務相はこれを「ミニIMF」と呼び、BRICS諸国が資本逃避や通貨下落のリスクに陥った際に緊急財源としての役割を果たすことを目的とすると説明する。予防策や経済危機後の対処のための補助として、同基金との通貨スワップ取引を利用できるという。

 この基金には、中国が410億ドル、南アフリカが50億ドル、ロシア、ブラジル、インドがそれぞれ180億ドルを自国の外貨準備から拠出し、中国の圧倒的強さが目立つが、経済のみならず、外交でもBRICS諸国の共同歩調が目立つようになってきたことの大きな事例だといえる。「新開発銀行」を、危機後の世界秩序を構築する方向性として大きな意味を持つ一歩だと評価する識者もいるほどだ。なお、新開発銀行は中国が主導しているが、ロシアはかねてより中国とBRICSの中で主導権争いをしており(拙稿『最近の中露関係――ロシアの脱欧入亜と両国のライバリティ』参照)中国に完全にお株を奪われないようにロシアが必死で動いている様子が見られる。

新開発銀行かAIIBか
ロシアのメリットと懸念

 実はロシアは最初から積極的にAIIBへの参加表明をしたわけではない。この参加に関するロシアの事情や議論を検討してみよう。

 ロシアは、AIIB参加の申請を行ったが、ロシアの出資比率は現状ではまだ明らかにされていない。ロシアの参加のメリットとしては、プロジェクトへの優遇的な資金供与などの特恵が得られること、完全な権利を有して銀行運営に参加する可能性があること、軍事大国としてばかりでなく経済大国としてのアピールができること、などがあるとされている。

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