2024年11月24日(日)

World Energy Watch

2015年4月17日

仲間内からも批判される、必死なオバマ

 オバマ大統領が残したいと思っているレガシーとして米国のマスコミは、次の4政策を上げている。

○オバマケア(医療保険制度改革)
○刑事司法制度改革
○イランの核問題
○気候変動対策

 オバマ大統領が、このなかでも重要と考えているのは、気候変動だろう。ハフィントンポスト紙のインタビューでオバマ大統領は、成功した大統領と呼ばれるためには、辞任時に次を達成することだと述べている。「国が繁栄し、より多くの人が機会を持つこと、子供がよりよい教育を受けられること。国がさらに競争力を持つこと、そして気候変動問題がより真剣に考えられ、何らかの対策が取られていること」。(http://www.huffingtonpost.com/2015/03/21/obama-huffpost-interview-transcript_n_6905450.html?1426972456

 3月に米国の研究機関をいくつか訪問し、オバマの気候変動問題への取り組みをどう評価するか意見交換を行ったが、民主党系と言われる研究機関からも「オバマは民主党の伝統的支持基盤である労働組合の意向にも反し、気候変動対策を進めているようだ。レガシーを残したいとの気持ちが強く、だんだん環境派しか見えなくなっているのではないか」との意見があった。

 ヒラリー・クリントンも気候変動問題に取り組むオバマ大統領の方針を支持する姿勢を既に示しているが、その背景には気候変動に取り組むことは大統領選にとりマイナスではないとの判断があるものと思われる。2014年のスタンフォード大学、USA Today紙とリソーシス・フォー・ザ・フュ―チャーの共同世論調査によると、米国民の73%が温暖化は起こっていると認識している。

「オバマの石炭への戦争」の波紋

 オバマ大統領が、気候変動対策として打ち出したのは米国の二酸化炭素排出量(CO2)の約38%を占める発電プラント、なかでも全体の29%の排出を行っている石炭火力への対策だった。2013年6月にオバマはCO2削減対策を環境保護庁(EPA)の大気浄化法の権限で行う方針を打ち出した。目標は05年比20年までにCO2を17%削減だった。議会の協力がなくても気候変動対策を進めるとの意思表示でもあった。

 この大統領の方針を受け、13年9月にEPAは新規発電所からのCO2排出量について規制値を発表したが、その値は1kW時当たり約500グラムであり、現在の石炭火力の効率を前提にすると達成は不可能な数字だった。ちなみに、日本の発電プラントからのCO2排出量は、燃焼分だけで石炭864グラム、天然ガス476グラムであり、米国の基準は日本の天然ガス火力なみの厳しい目標となっていた。石炭火力新設の際には、CO2の補足・貯留設備(CCS)の設置が条件になるが、経済性は大きく悪化する。


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