オバマはレガシーを残せるのか
EPAの権限を利用し、議会をバイパスし石炭への規制を強め温暖化対策を遮二無二に進めるオバマだが、レガシーは残せるのだろうか。EPAの具体案の作成は遅れ気味であるし、既に12州は既存火力発電所からのCO2削減案を作成しないと表明している。次期大統領が共和党になれば、反故にされる可能性もある。
仮に、ヒラリー・クリントンのようなオバマの気候変動政策の強い支持者が大統領になっても、共和党知事、議員を中心とした様々な妨害行為が予想され、EPAの規制が実行されるまでには紆余曲折があるだろう。EPAの権限を利用するアイデアは良かったが、実効性については、まだ不透明だ。
日本の温室効果ガス排出目標にも影響が
米国は、オバマ大統領と中国の習近平主席が合意した温室効果ガスの排出目標(『米中合意の温室効果ガス目石炭離れが進む両国の事情と思惑』)、2025年に05年比26%から28%を正式な削減目標とした。一方、EU28カ国は1990年比40%削減を目標としている。
米国の目標の前提は、先にみた国内の発電部門、石炭火力からのCO2削減が実現することだ。しかし、電気料金の上昇を引き起こすとして反対が石強い炭火力からのCO2削減が実現するかは不透明だ。
欧州の事情も複雑だ。EUは40%の目標は他国の目標次第で見直されることがあるとしている。この見直しは、目標値が強化されるということでは必ずしもない。欧州の産業界を中心に、欧州の競争力に影響が生じる、あるいはEU外への工場移転により、世界のCO2排出量が増えるような場合には、目標値の引き下げもあると牽制する意見もでている。
年末パリにて開催される第21回気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)にて、各国の排出目標が議論される。米国もEUも目標値を今後引き下げる可能性があることを頭に置き、日本の目標値を考えるべきだ。欧州でも、競争力と温室効果ガス排出のバランスをどう取るかが問題になっている。気候変動問題は重要だが、欧米の状況をよく見極めないと、世界のなかで日本だけが競争力を失うことになりかねない。
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