2024年11月22日(金)

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2015年5月2日

参加者の3人に1人がインターン先から内定をゲット

 大学4年生のNさん(男性)は、5月になった今も就活支援サイトはどこも使っていない。

 「昨年の秋にあるIT企業の長期インターンシップに合格して、そこから学校と会社を行き来する生活をしています。学生インターンがそのまま社員になった実績がある会社なので、このまま続けていれば社員途用の可能性もあると考えています。知らない企業に就職するよりも、自分の働くイメージが沸くインターン先の方が魅力が大きいです」(Nさん)

 実際に職場の中に入って仕事を経験するインターンシップだと、企業説明会ではわからない職場の空気を感じることができるし、社員との距離もぐっと近くなる。仮にそのまま採用に至らなくても社会で働くことを肌で感じられることから、近年は企業への長期インターンシップを狙う学生が増えてきている。

 この4月に大学に入学したばかりのIさん(女性)も、すでにインターンシップの受け入れ先を探していると言う。

 「就職活動を見越してというよりは、早く社会を知りたいという思いが強いです。結果的にそのまま就職できれば理想ですが、そうでなくても、ある程度有名な企業でのインターン経験があれば面接でも有利になると考えています」(Iさん)

 2014年8月に株式会社ディスコが発表した「業界別インターンシップ実施状況調査」によると、インターンシップに参加した15年卒の学生のうち、全体の54.9%がインターン参加企業の採用選考に応募。そのうち内定を得た学生は、3人に1人の35.5%だったという。インターンシップという仕組みが就職活動において優位に働くことを理解している学生も少なくないようだ。

参考:業界別インターンシップ実施状況調査<2014年8月発行>
http://www.disc.co.jp/pressrelease/detail/Internship1409-2091.htm

インターンシップは新たなかたちの「縁故採用」

 インターンシップを経験した学生を採用するメリットは、企業側にもある。クリック一つで企業へのエントリーができる昨今では、「記念受験」の感覚でエントリーする学生も絶えない。その結果、採用枠をはるかに超える応募があった場合、企業はある程度システマチックに応募者をふるいにかける必要が出てくる。面接官の顔も見ることなく不採用になる学生が出てくるのも、この仕組みでは仕方がないことなのかもしれない。

 現在の応募・採用の仕組みを考えると、「インターンシップからの社員途用」は、新たなかたちの「縁故採用」のように感じる。かつては「コネ」と言われると嫌なイメージを抱くことも多かったが、インターンシップは学生が自ら企業とのコネクションを作り出し、お互いに信頼感を醸成したうえで採用するために、入社後のギャップやビジョンの食い違いがほかの学生よりも少ない。しかも採用活動のためにわざわざ説明会の会場を予約したり、社員を動員するコストもかからずに済むため、企業としてもある意味、理想的な形なのかもしれない。

 真夏にリクルートスーツを着て歩く多くの学生たちと、一社の長期インターンシップにかける一部の学生たち。やっていることは違っても、どちらも「就職活動」をしていることに変わりはないのであれば、一人でも多くの学生が来年の春に笑顔で社会人になれていることを願うばかりである。

  
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