2024年7月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年6月3日

 米国は、ポーランドなどウクライナの隣国への支援と地中海危機への関与を見合うものにすべきである。それが、すべてのNATO諸国の安全保障は不可分ということを示すことになる、と論じています。

出典:Jim Hoagland,‘A challenge in the south for NATO’(Washington Post, April 24, 2015)
http://www.washingtonpost.com/opinions/a-challenge-in-the-south-for-nato/2015/04/24/c9654628-ea78-11e4-9767-6276fc9b0ada_story.html

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 NATOの南側の諸国が地中海での不法入国移民問題を安全保障上の大問題と考え、ウクライナ問題の重大性の認識に足りないところがあることを、この論説は指摘しています。南欧諸国の状況を正しく描写していると思われます。

 しかし、これら南欧諸国の考え方は適切であるとは思われません。確かに、難民や不法入国移民といった問題は、諸々の困難をもたらしますが、脅威というのには程遠いものです。人道的な危機ではありますが、本当の意味での脅威ではありません。入管当局、警察当局の問題であり、軍が出ていったとしても、それは救難のためであって、戦闘のために出ていくわけではありません。こういう問題とプーチンによる意図的なウクライナ侵略を同じレベルで考えるなど、理解に苦しみます。また、テロは脅威ですが、国の安危にかかわる戦略的な次元の脅威ではありません。

 「欧州の平和ボケ」が、こうした間違った考えの背景にあると思われます。かつて9.11同時多発テロの直後、当時ネオコンの旗手として名を馳せていたロバート・ケーガンが、著書“OF PARADISE AND POWER”(邦題『ネオコンの論理』)で、欧州を「ポストモダンの楽園」と呼んで非難したことが思い出されます。しかし、論説が指摘するような現実がある以上、何らかの対応をせざるをえません。同盟の団結維持のために、ホーグランドがここで主張しているように、ウクライナ危機にも地中海危機にも対応するというのも一つの手でしょう。同時に、NATOで脅威認識についてすりあわせをする必要があるように思われます。

 ウクライナについては、プーチンに押されっぱなしの嫌いがあります。侵略者は「食事中に食欲を増す」傾向があることを踏まえて対応をしないと、将来に禍根を残すことになるでしょう。

  
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