2022年10月6日(木)

地域再生のキーワード

2015年6月29日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

6年かけて全て自前でログハウスを建てた番匠誠さん夫妻

 すべての事業で合計500万円ぐらいの年間収益が上がるようになった。問題はその使い方だ。派手なイベントをやれば一発で消えてなくなる金額だからだ。

 はじめのうちは手伝った高校生をプロ野球観戦に招待したり、全世帯に各1万円のボーナスを配ったりした。取り組みの成果を住民全員に味わってもらうためだ。

 最近では、85歳以上の人に年1万円のお祝い金は出すが、後は、次なる事業の再投資に振り向けている。「年間で1000万円ペースの財源が確保できるようにしたい」と豊重さん。韓国の企業家との交流をきっかけに、とうがらし栽培に乗り出し、粉末状に加工して韓国に輸出する計画が進んでいる。

 集落の空き家を「迎賓館」として再活用するプロジェクトも着実に進んでいる。芸術家に住居として提供し、移住を促しているのだ。画家や彫刻家、写真家などが移り住んでいる。また、研修などで外部から訪れる人の宿泊施設として活用している。

「故郷は自分たちで守る」

 集落を訪れる人たちが散策できるコースの開発も進めている。牛小屋を改装したカフェをオープンさせ、旅行者がのんびりとくつろげる空間を整えた。住民が自力で建てたカナダ産のログハウスも集落の観光資源になると、豊重さんは考えている。

 集落を横切る道の両側に石積みが続く場所がある。ここの壁に集落に住む芸術家や高校生が絵を描き、「ロマンス通り」と名付けてはどうか、というアイデアも浮上している。何もない田舎をアイデアによって観光地にしてしまおうというわけだ。

 集落の中心部にある自治公民館の壁には、様々な「記憶」が壁一面にかけられている。数々の表彰額や長老の写真、住民たちの顔写真。過去のイベントの記録や地域おこしのモットーなども掲げられている。1月に視察に訪れた石破茂・地方創生担当相を歓迎したイベントの様子なども所狭しと貼られている。

 やねだんの20年は、決して派手な取り組みではない。だからこそ今も長続きしている。だが、その原点にあるのは、あくまでも「故郷は自分たちで守る」という自立の精神である。

  
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