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地域再生のキーワード

2015年6月29日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

 「人は説得しても動かない、納得してもらえば動くものだ」

 そんな豊重語録がリーダーたちに勇気を与えてきた。この連載の1回目で取り上げた熊本県菊池市の江頭実市長もそんなひとり。宝がいっぱいあるのに寂れている故郷を見て、国際金融マンから市長に立候補した。改革への思いが強いだけに説得口調で話をしがちだったが、豊重さんに会って「目から鱗が落ちた」と語る。

会う人会う人に豊重さんは声をかける

 そんな豊重さんの地域おこしが始まったのは1996年のこと。それまで65歳前後の人が任期1年の持ち回りで務めていた柳谷自治公民館長に、突然、選ばれたのである。

 豊重さんは「自立自興」に向けて矢継ぎ早に手を打った。まず考えたのが、休耕地を借りて住民の手でカライモを栽培することだった。10アールあたり10万円の収益を上げる計画を立てた。有線放送で呼び掛けると30アールの土地の無償提供者が現れた。

 高校生が植え付け作業をやる予定だったが、不慣れな手つきに見かねた高齢者たちが畑に集まり、あっという間に作業を終えた。初年度は35万円の収益を上げた。98年のことだ。その後、規模を拡大して2002年には1ヘクタールになり、収益金は80万円にのぼった。

 続いて始めたのが土着菌づくり。米ぬかなどの原料に山や田畑に生息する糸状菌を植え付け発酵させたものだ。家畜の飼料に混ぜて与えることで、ふん尿の悪臭が軽減できる効果がある。この土着菌を酪農家に有償で頒布したり、土着菌を使った堆肥も作って販売している。いまでは土着菌の販売だけで年間150万円の収益が上がるようになった。

 この土着菌をカライモ栽培にも活用した。さらに自分たちで生産したイモを使った芋焼酎も売り出した。ラベルには「やねだん」と墨書されている。集落のオリジナルブランド商品である。キャッチコピーには、「土着菌堆肥のさつま芋使用」とうたわれている。現在は年間5000本を生産、通信販売で全国に売れ、完売する。

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