世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年7月2日

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出 典:Mark Valencia‘China's potential security game changer in the South China Sea’ (South China Morning Post, May 14, 2015) http://www.scmp.com/comment/insight-opinion/article/1796488/chinas-potential-security-game-changer-south-china-sea

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 今日、中国は南シナ海における領有権拡張の主張を強め、岩礁埋立て、滑走路の建設、あるいは観測所の設置などにより、既成事実を積み重ねつつあります。本論評は、これら既成事実の上に、中国が南シナ海の防衛識別圏(ADIZ)を設定する可能性が出てきたことに警鐘を鳴らすものとなっています。

 本論評によれば、南シナ海のうち、パラセル(西沙)、プラタス(東沙)の諸島については、中国が係争島嶼部を含まない範囲でのADIZ設定もあり得ると言います。その場合には、これに批判的な国々もなんとかそれを受け入れることが可能かもしれませんが、中国にとっては設定の意味が少ないと指摘しています。

 もう一つの可能性として、スプラトリー(南沙)を入れてADIZを設定する場合、この地域の秩序を一挙に不安定なものにするだろう、と本論評は述べています。この場合には、米、日、ASEAN等にとって「飛行、航行の自由」は害され、それは国際秩序に対する一大挑戦になるだろう、と指摘しています。

 中国が南シナ海上空にADIZを設定する可能性については、現段階では必ずしもはっきりしません。しかし、東シナ海で2013年11月に突如としてADIZを設定したように、南シナ海において中国の領有権主張に対し異議を申し立てる国々の力が弱いと判断すれば、今後中国が同様の挙に出ることも十分に考えられます。

 最近の米国政府は、南シナ海領有権問題について「埋立て作業を行っても、これは領有権主張の根拠にはならない」としてこれまでより明白な反対の意思表示をし、同海域への米軍機、艦船の派遣を含めた対応策を検討しつつあります。

 これに対し、中国は島嶼に新しく設置された観測所や観測記録を公表していますが、もちろん、これらは国連海洋法条約など国際法上、領有権を有する根拠とはなり得ないものです。

 中国は、先般の米国偵察機の南シナ海への派遣を非難しつつ、米国が人工島建設の停止要求を取り下げなければ、「戦争も避けられない(「環球時報」)」と恫喝的な発言を行いました。米国はこれまで後手にまわっていましたが、やっと本気で中国の独善的な拡張主義阻止に乗り出した形です。
 

  
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