2024年4月27日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2015年6月26日

――北朝鮮でももちろん覚醒剤は非合法ですよね?

米村:当然禁止されています。ただ、多くの場合、捕まったとしても賄賂を渡せば済むとも聞きます。

――中国の北朝鮮国境付近で米村さんはこれまでに多くの北朝鮮の方々に接触し取材されてきたわけですが、その人たちは貿易関係の仕事に就いている人が多いんですか?

米村:もちろん貿易商もいますが、親戚訪問で通行証が出るので、個人的な用事で行き来し、そのついでに少し商売もしている人もいますね。通行証を手に入れるには、中国に親戚がいることと、お金が必要になります。

――北朝鮮にとって中国は、政治的にも、経済的にも、そうした国境付近の交流といった点でも大きな存在だと思うのですが、あらためてどんな存在だとお考えになりますか?

米村:北朝鮮政府の立場と、住民の立場、どちらで考えるかで違ってくると思います。住民の立場で言えば、中国にはお金も食べ物もある夢のような国だという人も少なくありません。国境付近で知り合いになった北朝鮮の女性は、可能ならば北朝鮮の人間は全員中国に出てくるだろうとまで言っていました。

 また、政府関係者、とりわけエリート層で初めて中国を訪れた人の中には、中国の地方都市の町並みを見ると、ため息をついて、本当に中国は電気が有り余っているんだなと漏らす人さえいます。我々からしたら普通なことですが、平壌から来た人にとって中国の豊かさは衝撃的なものに映るのです。一方で、こうした中国の豊かさは、北朝鮮の体制安定に悪影響を与える可能性も十分にあります。ですから、羨望と警戒、依存心と恐れなど、さまざまな感情が入り交じっているのではないでしょうか。

――豊さという点ではたとえば携帯電話の普及はどうなっているのでしょうか?

米村:北朝鮮でも携帯電話は200万台くらい普及しています。エジプトの企業が進出し、北朝鮮国内で使える携帯電話をつくっています。もちろん盗聴はされていると思いますが、日常的に使うのは問題ないようです。ただ、携帯電話を充電することに関しては悩ましく、平壌のごく普通のアパートでは1日24時間のうち電気が通るのは3~4時間なので、その間に必死に充電しないとなりません。


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