オトナの教養 週末の一冊

2015年7月3日

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中村宏之 (なかむら・ひろゆき)

ジャーナリスト

1967年生まれ。91年、慶應義塾大学経済学部卒、読売新聞東京本社入社。ロンドン特派員、米ハーバード大学国際問題研究所研究員、経済部デスク、調査研究本部主任研究員などを経て2017年4月より読売新聞東京本社メディア局編集部次長。『御社の寿命』、『世界を切り拓くビジネス・ローヤー』、(いずれも中央公論新社)など

 著者が言うように、檀家制度が限界を迎え、都会などでは墓を買うことも難しくなっている今の時代、葬儀も簡略化されるようになる。そうした中で、就職などで地方から都会に出てきた人の中には故郷に戻らない人も多く、村落共同体の一部をなし、地元の寺と関係のあった実家の墓を処分したいという人も増える。それは墓の引っ越し=改葬の需要が増えていることにも現れている。

無縁墓が増えて行くのはある意味当然

 改葬とは、〈墓を処分し、そこに葬られていた遺骨を移し、新たに自宅近くの墓地などに埋葬し直すこと〉ということだが、これについても役所の手続きから、墓石の処分まで行うのはかなりの労力を必要とする。本書で初めて知ったことも多いが、ことほどさように、墓を所有することは大変なことなのである。多額の費用や労力がともなうこうした手続きや作業が放棄され、無縁墓が増えてゆくのは、ある意味で当然の流れなのかもしれない。

 著者は「墓の未来は」と題した終章で、墓は作りたくないが、供養はしてもらいたいという人のため方法や、自然葬、そして著者の島田氏が提案する「0(ゼロ)葬」などを紹介している。生き方は人それぞれであり、そして人生の最期の迎え方もそれぞれである。著者も最後に指摘しているように、どんな選択をして答えを出すのかは、一人一人の判断に任されている。

 墓や死後の選択という重いテーマだが、すべて人に平等に訪れるものであり、家族を含めた多くの人に関係する問題である。これまでどおりの伝統やしきたりが、今の社会の実情にあっているのか、一度たちどまって考えてみようと思わせる機会を与えてくれる一冊である。

  
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