2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年7月14日

 中東関与は、報われないことの多い、根気の要る仕事だ。米国は、イランとイラクでは共闘し、シリアでは敵対する矛盾に慣れなければならない。イラク・クルドも有用な味方だ。リビア沈静化のためにはエジプトのシシとも取引する必要があるかもしれない。

 米国には、中東で果たすべき重要な役割がある。尻込みし続ければ、米国を含む全ての関係国がさらに苦境に陥ることになろう、と論じています。

出 典:Economist ‘Entangled’(June 6-12, 2015)
http://www.economist.com/news/leaders/21653612-why-america-must-stay-engaged-middle-east-entangled

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 中東情勢の混乱ぶりは酷い状況です。

 米国人が距離を置きたいと思うのも無理はありません。

 この状況が出てきたのはブッシュのイラク攻撃、オバマの無為による面もありますが、それだけではなく、もっと根深いものであるとの上記論説の指摘はその通りでしょう。学者によっては、第一次世界大戦後の中東処理、英仏間のサイクス・ピコ協定などに混乱の原因を求める人もいます。ボストン大学教授フロムキンの著書、「A peace to end all peaces」(注:第一次大戦をA war to end all warsと呼んだのをもじったもの)は、その典型です。他方、この論説のように戦後のアラブの政治のあり方に混乱の原因を求める考え方もあります。

 混乱の原因を論じることも重要ですが、問題は現在の混乱に今後どう対処していくかです。

 この論説は、米国は中東情勢をその流れに任せるのではなく、それに影響を与えるように関与すべきある、石油、核拡散、テロなどを考えてもそうすべきであると論じています。米国は世界の警察官ではないとオバマは言いますが、そういう関与縮小姿勢は、結局米国の利益が損なわれることに繋がると指摘しています。国内政治上、中東からの撤退は人気のある政策でしょうが、この論説の指摘は正しいように思われます。

 日本では、米国の中東関与の深まりとアジアへの軸足移動をゼロ・サム・ゲームのように考える人がいますが、テロ、石油、不拡散の問題を考えると、必ずしもそういうことにはなりません。米国が中東に関与することは、日本としてもいいのではないでしょうか。

  
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