世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年7月16日

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出 典:Michael Auslin‘Turning the ‘Asia Pivot’ Into Reality’(Wall Street Journal, June 11, 2015)
http://www.wsj.com/articles/turning-the-asia-pivot-into-reality-1434039972

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 上記は、面白い考え方です。豪日韓印を外側の三角形、東南アジアの国々を内側の三角形と捉え、米国はこれらのグループとの関係強化を図るとともに、これら二つのグループ相互間の協力を強めるように仕向けるべきだと言います。同盟国・友邦国との関係を強化し、同時に、これ等の国の間の協力を推進させるとの考え方は、米安全保障戦略にも述べられており、進むべき方向としては、基本的に望ましいものです。

 しかし、オースリンの主張については、優先順位の置き方、アジア諸国の反応、実現可能性などを考えますと、米政府の明示的な政策とするには問題があるように思われます。

 第1に、アジア回帰策の第一の優先順位は、アジア側内部の多国間協力推進というよりも、米国のアジア太平洋でのプレゼンスの強化であり、アジアの同盟国、友邦国との関係強化であるべきです。

 第2に、アジアの国々を大きな国、小さな国、リベラルな国、そうではない国と分類して議論することは、政治的に無用な反発を招くおそれがあります。民主化されたリベラルなアジア連合とも言うべき議論は、微妙な問題です。加えて、東南アジアの中国観は、シャングリラ対話におけるシンガポールのリー・シェンロン首相の基調演説に見られるように、曖昧であり、一般的な中国包囲網と取られるような議論には敏感になるでしょう。アジア回帰政策に、民主主義を持ち込むのは逆効果です。アジア回帰政策の真髄は、台頭する中国の振る舞いがもたらす問題から、如何に地域の秩序と安定を守るかであって、民主主義の話ではありません。また、アジア諸国は、総体として、米国のアジア回帰を歓迎しているのですから、それを複雑化するようなことは避けるべきでしょう。

 米国のアジア回帰政策は、グランド・デザインよりは、個々の協力の積み重ねでいくことがより効果的であると考えられます。すなわち、米国にとって、具体的には、(1)米国の軍事的プレゼンスと活動を強化し、日豪韓印といった同盟国・友邦国との関係強化を図る、(2)それぞれの状況を配慮しつつ東南アジアの関係国との関係を強化していく、(3)日豪韓印の間の協力強化、東南アジアの関係国間の協力強化などを慫慂していく、(4)南シナ海での中国の行動に対しては、日豪韓印や越、比、シンガポール、マレーシア、インドネシアなどとの間の有志連合を築き、連携、協力していく、(5)中国とのエンゲージメントを維持、強化していく(6月末に米中戦略経済対話がありましたし、9月には習近平の訪米が予定されています)ことこそが重要な要素ではないでしょうか。

  
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