2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年7月16日

 6月11日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル紙で、米国のシンクタンクAEIのオースリンが、米国のアジア回帰政策を実行するために、日豪韓印(第一の三角形)と東南アジアの国々(第二の三角形)との間で多数国間の協力の枠組み(二つの同心三角形)を具体化すべきである、と主張しています。

日豪韓印(第一の三角形)と東南アジアの国々(第二の三角形) (画像:iStock)

 すなわち、シンガポールで開催されたシャングリラ対話で、カーター米国防長官は、南沙諸島での中国による埋め立ては認めないと明言し、同時に、すべての当事者が同様の行動をやめるよう要求した。米国は中国が領有を主張する島の空域や水域に今まで通り米軍機を飛ばし艦艇を通過させることを明確にした。

 シャングリラでの長官発言は具体策を欠いたので、大した対中抑止効果を持たないのではないかとの懸念を惹起したが、その後長官は、中国の拡張主義への具体的対応を明らかにした。ベトナムでは、警備艇などの売却を約束し、防衛ビジョン共同声明を出した。インドでは、防衛産業協力の拡大を約束した。

 オバマ政権は、大きな国のグループと小さな国のグループをリンクして、一体的な多国間協力の枠組みを構築すべきである。米国は、豪日韓印という民主グループとともに、海洋パトロール、諜報共有や軍事教育などの協力拡大を通じて地域の公共財を提供することができる。

 東南アジアの国々は、内側のもうひとつの三角形となる。インドネシア、マレーシア、シンガポール、ベトナムなどは、自国の防衛力を増強し役割を果たすことができる。ベトナムを除き、これ等の国は自由主義国家か、あるいは自由主義国家になりつつある国家であり、より広い自由主義国家のグループの一部になることにより、マレーシアのように、民主化へのコミットメントを鮮明にすることができる。

 二つのグループを一体化することを米国の明示的な政策にすべきだ。それが、アジア回帰戦略を一層具体的、効果的にする方法である。この二つの同心三角形アプローチは、中国の一方的な行動を抑止することに貢献するとともに、アジアの繁栄と安定にも貢献するだろう、と述べています。


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