焦りを生んでいる原因、それは学生の異常な内定率の高さにある。マイナビが発表した6月時点の学生の内定率は44.2%。採用広報解禁から3カ月時点で比べると、昨年の約2・7倍の内定率だ。
(出所)マイナビ提供資料よりウェッジ作成
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「真面目に選考開始日を守ろうとした大企業も、DeNAなどのアッパーベンチャーやソフトバンク、新経済連盟に所属する楽天などの企業が早めに内定を出し、学生のトップ層を確保したのを見て出遅れに気づいた。面談と称して実質的な面接を行ったりリクルーターを派遣している」(業界関係者)。
大企業が選考活動の一番後ろに位置するのは初めてのことだ。先に動ける中小企業が喜色満面かと言えば、そうでもない。
防水材メーカーの田島ルーフィング(東京都千代田区)で人事採用担当を約30年務める総務部キャリア支援課の田中保江課長代理は「内定に承諾をしてくれている子も、本当に来てくれるかは分からない」と不安を語る。
今回の就職活動で流行り言葉になった「オワハラ」。企業が「内定を出してほしいなら就職活動を終了することを承諾してほしい」と学生に迫ることを指し、各大学のキャリアセンターに、オワハラにどう対応したらいいかを聞く学生の数が増えたという。「各キャリアセンターは承諾書を企業に提出しても法的根拠は薄いことをわざわざ説明している」(業界関係者)。
学生の変化はどうか。
業界関係者たちは、就職活動への意識が高く、早くから就職活動を行って内定を保持している学生と、いまだに内定がなく楽観的に就職活動を続けている学生に例年以上にハッキリと二極化していると口を揃える。
新卒人材紹介を行うシンクトワイスの猪俣知明代表取締役社長は「身の丈が分からず落としどころを見つけられない学生は厳しい」と警告する。「7月中に内定を持っていない学生は、大企業でも内定をもらえず8月末以降苦しい状況に陥るかもしれない」。
前出の田中氏も楽観的な学生への印象を語る。「今年はあまりにも『私の就活の軸は』と言う学生が多い。自らのことを自らの言葉に落としこめていない学生が目立つ」。