2015年現在、30代後半男性のおよそ35%が未婚であると言われている。また、30代後半女性の未婚率は23.1%で、50歳の時点で結婚していない“生涯未婚者”たちの割合は、男性20.1%、女性が10.6%となっている(2010年国勢調査より)。
しかし、未婚者たちだって、最初から「未婚になろう」と自分で選んできたわけではない。「気がついたら、未婚だった状態」が30歳前後だけでなく、40代、50代になるまで続くようになっただけだ。
では、未婚と既婚を分けるターニングポイントとは、いったいなんだったのだろうか。
結婚したい……でも、できない
結婚したいと思いつつも、なかなかしない人は多い。
36歳の佐久間淳さん(仮名)も、そんな一人と言えるだろう。都心から1時間ほどのS県で勤務医をする彼は、住まいも生まれ育ったS県で、実家近くに住んでいる。
30歳になった頃から結婚を意識し始めて、去年、友人に誘われて結婚相談所に入った。
私とは、共通の知人を通じて1年前に知り合ったのだが、友人曰く、「イケメンで愛嬌のある男」。当時、私は記事に関する医学的な質問をしたくて専門医を探していたのだが、佐久間さんはどんな質問にも丁寧に答えてくれて、ついでに自分の恋愛状況まで教えてくれるというフレンドリーな面があった。
そこで、このたびの連載を決めたときに、まずは彼に取材を申し込んだ。なぜかというと、彼のような人が結婚しない理由をこそ、私は知りたかったから。彼のような……というのはつまり、エリートでルックスもよく、コミュニケーション能力もあり、そのうえで「結婚したい」と思っている妙齢の男性という意味である。
好きな女性とはめったに知り合えない
「今日、ボク、眼鏡なんですよ。しかも美容院も行けてなくてなんだかすみません」
少し遅れたので走ってきたという彼は、登場するなり私に頭を下げた。
平日の午後3時過ぎ。新宿のファミリーレストランはそこそこに混んでいて、時間通りに着いた私も席に案内されたばかりだった。
ウェイターに慌ただしくアイスティーを頼むと、彼は早速口を開いた。
「ボクが結婚できない理由ですよね……うーん、趣味が多過ぎるせいかなあ? 平日は勤務で忙しいから女性と食事にも行けないし、土日は開業のための勉強会や、スポーツの大会に向けた練習や、バンドのライブもあるし。よほどの“恋愛スイッチ”が入らない限り、ひとりの女性とまた会おうという気にはならないんですよね。だから、ダメなのかもしれないけど……」
「結婚しない」を「できない」に変えて、おどけた感じで答えた。
二重まぶたの整った顔立ちに、流行のチェックのシャツ。忙しくても、お洒落に手を抜きたくない。
「だけど、佐久間さん、もてますよね」聞くと、
「いやあ、僕なんてもてないですよ。過去につきあった女性も2人だし……」
恥ずかしそうに目を伏せた。